都内「24時間保育園」運営実態 「電車で給食を運搬」「勤務中に保育士が飲酒」

 

現在、日本では国を挙げて女性の「職業における活躍」が推進され、男性と変わらない働き方を選択する女性も多い。

ただ、女性が子どもを産んだ後も築いたキャリアを継続しやすい状況にあるとは言いがたく、保育所の充実が欠かせない。

 

保育所の「数」の問題とは別に、保育「時間」の問題もある。

接客業や医療関係など夜勤の人や残業が深夜にまで及ぶ人、シングルマザーなど子どもの預け先に悩む世帯は多い。そうした中、都心を中心に増えているのが「24時間保育園」だ。

その多くが認可外保育施設(いわゆる無認可保育園)だが、無認可への補助金拡大も検討されており、今後一層の増加が見込まれる。

 

24時間保育園を利用する保護者にとっては、生活を維持するために必要不可欠な存在といえる。

しかし、中には運営方法が適切とはいえない施設も存在する。今回は、ある24時間保育園の実態をリポートする。

 

朝の通勤ラッシュが終わった午前10時半すぎの都内の某駅。

改札前に大きなキャリーケースを持った男性が現れた。示し合わせたように数人の人だかりができる。

男性は1人ひとりに荷物を渡す。

受け取った人たちは足早に改札を通りぬけ、それぞれ帰路についた――。

 

たくさんの人が利用する駅の改札口。

毎日繰り返される光景の中で、決まった時間に見られる謎の取引風景である。筆者はその様子に不審なものを感じて、荷物を受け取った1人の女性の後をつけてみることにした。

 

■車内に漂う食べ物の香り

女性が電車内に荷物を運び込み、ドアが閉まった。

女性のまわりにおいしそうな匂いが漂っている。荷物の中身は食べ物なのだろうか。

しかし、なぜ電車で?

某駅の改札で荷物を受け取った人たちは、みんな電車で食品を運んでいるのだろうか。

 

女性はまもなく目的の駅に到着し、電車を降りた。筆者も続いて降り、女性のあとを追った。

改札を出てしばらく街並みを進むと、女性の姿は建物の中に消えていった。その建物には、保育園の看板が掲げられていた。

 

「給食を運んでいたのか?」謎の取引が思わぬ場所につながった。

しかし、電車で給食を運ぶとは、一般の保育園では聞かない話である。

冬であればともかく、夏場の高温多湿の環境下で食品を安全に運ぶのは、衛生管理の観点から容易ではない。しかしこの保育園では、日常的にこうした給食の配送作業が行われていることが取材でわかった。

 

■保育所の食事は「自園調理」が原則

保育所における食事の提供については、厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」で自園調理が原則とされている。

しかし、2010年から一定の条件を満たす場合に公私立問わず満3歳以上児には給食の「外部搬入」が可能となっている。

 

外部搬入で食事の提供を行う保育所は、厚生労働省の調査によると、調査対象となった約2万3000の認可保育所のうち2.4%に過ぎない(厚生労働省「保育所における食事の提供ガイドライン」)。

9割以上が自園調理によって食事を提供しているのが現状だ。

 

外部搬入のルールに関しては、「運搬手段等について衛生上適切な措置がなされている」ほか、

「栄養士から必要な配慮が行われる」

「子どもの発達段階や健康状態に応じた食事の提供やアレルギー、アトピーへの配慮、必要な栄養素の確保等に応じることができる」

ことなどが定められている(東京都福祉保健局の「東京都認証保育所事業実施要綱」)。

 

調べると、ここは認可外保育施設(無認可保育園)だった。

しかし無認可だからといって上記のルールを無視していいわけではない。厚生労働省「認可外保育施設指導監督基準」では認可保育所同様の対応を求めている。

 

ただ、厚生労働省の子ども家庭局保育課に「電車で保育施設の食事を運搬すること」の可否について問い合わせたところ、「指導監督基準で衛生上の配慮をするよう定めているが、運搬方法について規定はない」との回答だった。

 

さらに、この地域を管轄する保健所に問い合わせると、「保健所は給食調理の届け出を受けているが、営業許可を出しているのではないため、あまり強い指導もできない」という答えが返ってきた。

さらに「食品衛生法自体が性善説に立っているから」と、まるでいくらでもすり抜けられると認めたようなコメントもあった。

電車での食事運搬という、食品衛生管理に不安のある保育所に対し、打つ手がないのが現状だ。

 

この無認可保育園を運営する株式会社(以下、A社とする)は、都内の繁華街に複数の保育園を運営しており、どの園も24時間365日体制だ。



某ターミナル駅周辺にはA社の本部とされるマンションがあり、給食はその本部から運ばれていた。

A社は日本語と英語と中国語のトリリンガル保育をうたっており、日本人と中国人の職員が常駐している。

 

筆者はA社の関係者から話を聞くことができた。すると、食事以外の問題も明らかになった。

「中国人の先生が子どもを強く叩いて、指の跡が残るほどの傷になっていた」

「個人情報が書かれた紙がゴミ袋に入れられて、園の玄関前に1週間近く放置されていた」

「ウェブカメラで園内の様子が見られるが、保育室で夜、酒盛りが行われていた」

というのである。

 

こうした実態は保護者によって写真に撮られ、たびたび役所や児童相談所に報告されているが、抜本的な改善がなされたとはとても思えない状況だという。

 

これらの問題に関し、A社に問い合わせたところ、中国人保育者による虐待と個人情報のゴミの件については「そのような事実はない」と否定。

ただし、給食の電車による運搬と夜間の酒盛りについては認めた。

 

酒盛りについては「数年前にそのような事実はあったが、現場担当者の処分と代表取締役の報酬返還を行い、東京都福祉保健局へ報告している」という。

また、給食については「保健所指導のもと運営している」というコメントが返されただけだった。

 

そもそも、外国籍の人が日本の保育園で働くことについては制限がある。

まず、保育士資格は国籍を問わず受験が可能だ。外国籍であっても、就労制限のない「日本人の配偶者等」や在日韓国人などの「永住者」「永住者の配偶者等」、日系3世などの「定住者」であれば保育士として働いて何の問題もない。

しかし、それ以外の外国人については事情が異なる。

 

日本では「出入国管理及び難民認定法」で外国人が就ける仕事が定められている。

そして、その仕事に「保育士」は該当しない。

つまり、保育園で働く外国人保育士は、永住者など「就労制限のない外国人」でない限り、不法就労にあたるのだ。

 

ただ、保育園の中には外国人に「保育士」としてではなく「語学教師」として申請させることで、就労ビザをとらせるケースもある。

入国管理局がすべての保育所に立ち入り、勤務実態を調査をすることは現実的ではないため、見過ごされているのが現状だ。

 

■夜勤ママの頼みの綱ではあるが…

繁華街では、24時間開いている保育施設が夜勤ママの頼みの綱になっているのも事実だ。

夜の仕事をするシングルマザーだけでなく、自営業や官庁の職員など長時間労働を求められる家庭の子どもたちも多い。

保育園のハシゴをする場合もあれば、24時間保育園に数日間預けたままにされてしまう子どももいる。

預けっぱなしが48時間以上に及ぶようなケースでは、園も児童相談所に相談せざるを得ない。

 

しかし、現場の判断で

「あそこのお母さんは2日くらい連絡取れなくても、3日目にはちゃんとおカネをもってやってくる」

など相談を見合わせる場合もある。

児童相談所や役所はこうした保育園の実態を知っていたとしても、虐待などより優先して対処すべき課題に追われ、手が回りきっていない現実がある。

また、利用している保護者からすれば、この保育園は繁華街で子どもを預けられる大事な施設。

自分の子が在籍している間に大きな問題を起こさなければ、疑問を持ちつつも、利用を続けたいと考える保護者が大半ではないだろうか。

 

仕事に追われる保護者の窮状と行政の児童福祉の限界。

それらを解決する24時間保育園は現代社会で必要な存在かもしれない。

しかし、適切な運営が前提であることを忘れてはならない。

当然ながら、子どもたちの命をただ預かればいいのではない。

保育の受け皿を拡大しながら、保育の質を担保することが不可欠だ。

 

そのためには、行政による指導・監督機能の強化が求められる。

 

事故があってからでは遅すぎます・・・

 

 

-事件・事故, 国内, 話題
-, , ,