「横綱、白鵬」を野放しにしてきた責任

 

とりあえず一応の区切りが付けられた。

元横綱、日馬富士の傷害事件に関連し、日本相撲協会が20日午前、両国国技館で横綱審議委員会の臨時会合を開いた。

貴乃岩に暴行を働いた日馬富士については「引退勧告に相当する」とし、現場にいながら事件発生を食い止めることができなかったとして白鵬、鶴竜の両横綱には「厳重注意」とする旨を発表した。

 

同日午後に開かれた臨時理事会でも白鵬と鶴竜に厳しい追求が向けられ、両横綱には横審の罰則案を上回る形で報酬減額の懲戒処分が下された。

両横綱には来年1月分の給与を全額支給せず、加えて白鵬のみ2月分も半額不支給とすることを全会一致の特別決議として決定。

相撲界の第一人者でありながら暴行を止められずに大相撲の信用失墜を招いたとして白鵬に形式上では重い処分を下した。

 

だが残念ながら、この処分を妥当と思っている人は数少ないだろう。

 

日馬富士、鶴竜はともかくとして、世間からの白鵬に対する批判はこの“大甘処分”によって沈静化どころか火に油を注ぐ形になっている。

 

白鵬に対して、ネット上では

「給与減額では生ぬるい」

「初場所に出られれば勝って懸賞金をもらえるのだから、意味がない」

「長期間の出場停止が妥当」

などのコメントが数多く飛び交い、中には「引退」や「除名」といった厳罰を求める意見も散見されるほどだ。

 

一部メディアやネット上でも話題になっているように、この暴力事件では白鵬が“元凶”とされている。

実際のところ、ようやく実現した貴乃岩への事情聴取に基づき協会の危機管理委員会が明らかにした事件当日の様子においても、そもそも白鵬の貴乃岩に対する説教が結果的にその後の暴力事件への引き金となっていた。

 

それだけではない。

 

鳥取県警に被害届を出し、事件を告発した貴乃岩の師匠、貴乃花親方が協会側と対立する中、これまであまり表に出てこなかったタブーまでも疑惑として浮上している。

 

「八百長」だ。

 

●再び「八百長」の三文字が話題に

貴乃花親方は現役時代から“ガチンコ至上主義者”で、星勘定のやり取りが疑われるモンゴル人力士たちの集まりに弟子の貴乃岩が参加することを嫌がっていた。

そういう内容の報道は、タブーに踏み込む複数の週刊誌媒体でも再三扱われている。

事実かどうかは別にして、少なくとも6年前に発覚して大問題となった負の歴史を再び思い起こさせるような報道やネット上で鋭い嗅覚を持つユーザーたちがコメントすることなどにより、再び「八百長」の三文字が話題になっている。

そうなると前人未到の幕内優勝40回を誇る白鵬に対しても、その疑惑が向けられるのは残念ながら自然の流れと言っていいかもしれない。

 

ここ最近の白鵬バッシングに乗じて、世間の多くの人がこの金字塔にまでケチをつけている。

白鵬のイメージは凋落の一途をたどり、今や底割れの状態だ。

かつては「平成の大横綱」と賞賛された角界の第一人者が一転、現在は完全な「スーパーヒール」どころか「世紀の極悪人」にまでなり下がっている。

 

正直に言って今後、白鵬のイメージ回復は極めて難しいと言わざるを得ない。

ちなみにこれだけの猛バッシングを受けながらも白鵬は26日に発表される来年初場所の番付で先場所優勝の流れをくみ、東の正位に座ることが確実だ。

いくら重い処分を下したとはいえ、その白鵬を協会は今後も看板の横綱として興行を打っていかなければいけないのだ。

他の力士がどれだけ頑張ったとしても世間からの厳しい目もあって土俵上に微妙な空気が漂ってしまうのは避けられないであろう。

 



ようやく周囲は事の重大さに気付いたのだろうか。

協会の八角理事長は事件に関連して、暴力を防げなかったとして白鵬を名指しで強く非難。

さらに横審の北村正任委員長は、かち上げや張り手などを多用する白鵬の粗暴な取り口にも「横綱相撲とは到底言えない」と苦言を呈した。

 

●白鵬を野放しにしてきた責任

しかしながら時すでに遅しの感は否めない。

 

ここまで白鵬を野放しにしてきた責任は誰にあるのか。

今まで「大横綱」として持ち上げられていた最中でも、白鵬には言動や品格について横審から異論が出たことは何度かあったはず。そのタイミングで白鵬を厳しく指導し、正しい道へと導くことは師匠の宮城野親方も含めた協会の責務であったと考える。

確かに白鵬自身に最も問題があるのは言うまでもない。

いくら「大横綱」であろうが何だろうが、今の白鵬は明らかに調子に乗り過ぎて暴走している。

「もはや制御不能」という見方も出ているが、あながち大げさではない。

ただし、かつての白鵬には横綱としての品格を追求し、相撲道にまい進する時期があったのも事実だ。

白鵬が悪の道へと曲がってしまう分岐点を見過ごし、正しい方向へと引き戻せなかった協会執行部側の管理体制も相当に甘いと見られても仕方がない。

 

今回の問題で八角理事長は残りの任期3カ月の報酬を全額返上するとした。

しかしこの発表を聞いて、どうしても「潔い」と思えないのは筆者だけでなく大多数の人が同じであろう。

 

一方で愛弟子が暴行を受けながら協会への報告を怠ったとして執行部と対立を深めている貴乃花親方への処分の判断は先送りにされた。

余りに意固地になり過ぎている貴乃花親方の姿勢にも疑問が拭えないが、世間的に見て善悪の構図は明確に分かれつつある。

 

相も変わらずに封建的体質から脱却できず閉塞感で充満していることがより鮮明となった協会(=悪)に貴乃花親方(=善)はたった1人で戦いを挑み、何とか風穴を開けようとしている――という図式だ。

 

たとえ年内中に貴乃花親方への聴取が終わり、本人に処分が下されても両者のバトルはまず一件落着とはいきそうにない。

 

●大相撲が再び暗黒時代に?

協会側は今回の問題発生で統率力のなさも露呈してしまっている。

それだけに下手をすれば、たとえ処分を受けても協会執行部に対する貴乃花の不満の火種はくすぶり続けて両者の対立がエンドレスになってしまう危険性もある。

 

とにかく終着点が見えづらい。

 

果たしてこんなグチャグチャな状況のまま来年の初場所は興行を打てるのか。

白鵬、貴乃花親方、八角理事長、そして初場所以降に関しては番付で救済処置が施されることが決まった被害者、貴乃岩……。

キーパーソンである4人の動向が注目されているが、すべては相撲の取組とは関係のない土俵外の混乱についての話題だ。

 

処分の見直しでも図らない限り、このままでは世間から白鵬と八角理事長の責任を問う声は治まりそうもない。

とはいえ、これも兼ねてから事なかれ主義との批判が絶えなかった協会側の自業自得か。

 

人気復活を遂げたはずの大相撲に再び暗黒時代へと凋落する危機がじわじわと迫っている。

 

何とかして「奇跡の一手」を期待したい。

 

 

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