セウォル号で骨発見を“隠蔽”した韓国当局の思惑と顛末

 

2014年に韓国の珍島沖で沈没し、その後に陸揚げされた旅客船セウォル号の船内で人骨とみられる骨片が11月17日に発見されたにもかかわらず、海洋水産部(省に相当)が速やかに公表しなかった問題が韓国社会に波紋を広げている。

情報が漏れてマスコミが騒ぎ出した22日に公表したのだという。

捜索作業を見守り続けた5人の家族らが16日に「遺体発見を諦める」と表明。

18〜20日に葬儀を営むとした時期だけに、韓国メディアは「さらなる捜索を求める世論の形成を避けようとしたのではないか」と報じている。

 

「現場の判断」尊重

韓国紙・中央日報(日本語電子版)によると、海洋水産部は11月17日午前11時半ごろ、セウォル号の客室区域から取り出した貯蔵品を洗浄していたところ、骨1点が発見され、現場で遺体発掘鑑識団の関係者が肉眼で人の骨だと判断した。

ただ、これを行方不明のままの犠牲者の家族らには通知するのが遅れ、家族はこのような事実を知らないまま遺体のない葬儀を営んだとされる。

船体が引き揚げられた後の7カ月間で、セウォル号の捜索過程で遺骨収集報告が1日以上遅れたことはなかったという。

 

海洋水産部が23日公表した調査結果によると、船体の引き揚げ後、行方不明者9人のうち、今回の骨片が発見される前に遺骨の一部が見つかったのは4人。発見されたのは、この4人のうち1人の遺骨だとみなしたという。

残る行方不明者5人の家族が16日に記者会見を開き、「これ以上の捜索は無理な要求」と行方不明者の捜索断念を宣言。18〜20日に5人の葬儀を営むと表明したため、混乱を招かないよう葬儀が終わってから、骨片について知らせた方が良いと判断した。

 

17日午前に発見された骨片については午後に現場収拾本部の課長が副本部長に、午後4時ごろに副本部長が李哲朝(イ・チョルジョ)本部長に報告した。

 

調査結果を発表した会見に出席した李本部長は

「副本部長は行方不明者の家族と緊密に対話を続け、心理的な状態などについて比較的詳細に知っていた。さまざまな面から判断し、骨片がこれまで遺骨が見つかった犠牲者のものである可能性が極めて高いという報告を受け、現場の判断を尊重した」

と釈明した。

 

家族は怒りあらわ

ハンギョレ新聞(同)によると、この判断に対し、遺体のない葬儀を営んだ行方不明者の家族らは遺骨を収集し、きちんと葬儀を営む可能性まで政府が遮断したとして、怒りをあらわにしている。

同紙のインタビューに対し、ある家族は

「遺骨一点でも探すために(事故から)3年7カ月を必死に耐えてきた家族の気持ちを政府が本気で察しようとしたなら、このようにはならなかったはずだ」

と話したという。

 

セウォル号の捜索作業を見守り続けてきた家族らは16日、「もうセウォル号から離れざるを得ない」と宣言。

その際には「骨のかけらでも見つかれば、温かい場所に移してあげたい」と悲痛な思いを語っていた。

それだけに「家族の心情に配慮して」と海洋水産部が公表を控えたことについては、犠牲者の家族らの心情を踏みにじった行為と受け取られても仕方がないかもしれない。

 

長官の公表指示を放置

海洋水産部の金栄春(キム・ヨンチュン)長官への報告も遅れた上、遺骨発見時の通常の手続き指示も放置されたという。

17日の骨片発見からマスコミ報道が出た22日まで6日間を振り返ったハンギョレ新聞の記事によると、金長官に骨片発見の事実が報告されたのは20日午後5時ごろになってからで、金長官は「なぜこれまで報告しなかったのか」と叱責。

骨が発見された場合に通知する手続きを直ちに行うよう指示した。

 

ところが、金長官の指示はすぐに実行には移されることはなかった。

21日午後3時ごろに船体調査委員会に説明し、骨片が見つかった付近の客室で遺体の一部が発見されていた家族にだけ連絡し、身元の確認と処理手続きについて話したという。

 

同委員会を通じて遺骨発見の知らせを聞いた行方不明者の家族らが22日午前11時20分以降に海洋水産部に確認を要請。

事態が厳しさを増す中、現場収拾本部が大統領府に経緯を説明した。午後5時ごろには「セウォル号で遺骨発見を隠蔽」というマスコミ報道が相次いだという。

 

この問題に最初に反応したのは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領だった。

ニュースが22日午後に報じられて30分後、大統領府報道官を通じ「理解しがたい事態が発生した」と真相解明と責任追及を指示した。

 

22日になって事実関係を公表した海洋水産部が公表に後ろ向きだったのは、さらなる捜索を求める世論が高まらないよう隠蔽したとの疑惑が広がる中、長官は謝罪文を発表し、副本部長を解任した。

 

この疑惑の余波は、海洋水産部が犠牲者の家族の心情をないがしろにしたと批判されただけでは終わりそうもない。

長官の指示をも放置するなど部内のガバナンスの欠如が露呈する事態をも招いており、韓国政府がいかに収拾するかが問われている。

 

 



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