アルゼンチン海軍、潜水艦サンフアンからの最後のメッセージを隠蔽

 

消息を絶っているアルゼンチン潜水艦ARAサンフアンの捜査は、日本も含めた18か国が協力して進めている。

そして、このサンフアンについて、アルゼンチンのメディアで新たな問題が浮上している。

それは、アルゼンチン海軍がサンフアンから15日に受信していた最後のメッセージを隠蔽していたことである。

 

すなわち、消息を絶った15日以来、27日にTVネットワークの『Canal America24』がこのメッセージが存在していたことを突如公開するまでの12日間、海軍はサンフアンから如何なるメッセージも受信していなと発表していたのである。

アグアッ国防相も、ましてや軍隊の最高指揮権を持つマクリ大統領でさえもこの存在を知らされていなかったということになる。

 

◆だんまりを決め込んでいたアルゼンチン海軍

海軍のキャプテン、エンリケ・バルビ報道官が最初に声明を発表したのは17日の午前9時であった。

この声明の中で、バルビ報道官は消息を絶ったサンフアンについて、その後の動向はまったくわからないと述べていた。そのうえ、15日にサンフアンから最後のメッセージが届いていたことも公表しなかった。

しかし、15日にサンフアンから送られたメッセージの内容や、22日に包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)からサンフアンが通過したと思われる航路で爆発音が傍受されたという事実から推測すれば、サンフアンが爆発したという可能性が強くなっていたことは海軍で理解していたはずである。

しかし、その時点でもバルビ報道官の口からは一切それに関係したことへの示唆はなかったのである。

22日に爆発音があったということが公となった時点で、海軍はそれまで隠蔽していたサンフアンからのメッセージを同時に敢えて公表すると、「何故それを今まで公表しなかったのか」と、政府そして報道メディアから非難されるようになると判断したのであろう。海軍はそれを隠せるまで隠し通そうと決めたようである。

しかし、それが適時にバルビ報道官によって発表されていれば、その後の捜査の手順ももっと効率的なものになっていたであろうし、また44名の乗組員の家族にも余計な期待を持たせずに済んでいたかもしれない。

 

◆サンフアンからの「最後のメッセージ」

サンフアンから最後に発信したメッセージは以下の内容であった。

 

メッセージが「SITREP NRO1」で始まっている。海軍の安全保障についての専門家であるキャプテンのマルセロ・コベジによれば、「SITREP」は何か危険なことが発生したことを知らせる略語だという。

そして、それがサンフアンからのものである証拠は、その右隣に(SUSJ)、すなわち「SUbmarino San Jan」と記載されていることからも明らかだとしている。

 

そのメッセージの本文を和訳してると、このようなことが書いてある。

「吸排気システムから海水がバッテリーが収納されている3番のタンクに侵入して、電気のショートとバッテリーが配置されている台で初期的火事を引き起こした。船首のバッテリーは使っていない。分割回路で潜水中だ。乗務員に問題はなし。報告を継続する」

 

前出のコベジは、最後に<報告を継続する>と表現したことは重要だと指摘している。

なぜならば、危険な状態でないとすれば、<新しい変化があれば報告する>とでも述べたはずだというからだ。

 

◆爆発音傍受の3時間前に発信されていた

このメッセージは15日の午前7時30分に発信されてていた。つまり、それからおよそ3時間経過した後に、爆発音がCTBTOによって傍受されているのである。

問題はそのメッセージの内容が危険を孕んでいたにも拘わらず、海軍は規定に従ってそれから48時間が経過するまで捜査活動を開始しなかったことである。

海軍の指揮上層部により危機意識があれば、その数時間後にサンフアンからの報告がないとなった時点で捜査活動を開始していたはずだ。

しかし、捜査活動を開始する前まで、バルビ報道官は<潜水艦が危険な状態にあるという兆候は見られない>と発言していたのである。

 

アルゼンチンの代表紙である「Clarin」は、28日付の記事で、主筆のリカルド・キルチバウムが、“指揮上層部の責任だとでも呼べるような問題がある。それは一つの決まりが過酷なほどに守られているということである”と指摘している。

すなわち、海軍の規定のほうが実際の状況判断によって取るべき行動よりも優先されるという不条理な法則を批判しているのである。

また同氏は、このサンフアンからの最後のメッセージについての情報が報道関係者に漏れたというのは政治的なにおいが強くするとも指摘している。

恐らく、責任追及がどの方向に向けられるべきか具体的に示したものだろうと述べている。

 

◆安否を待つ乗組員の家族に走る亀裂

乗組員の家族らは、依然として海軍本部で用意したホテルに宿泊しながら安否を待っている。

その家族の中でも、今も無事生還を期待している家族と全員死亡していると判断している家族との間に亀裂が生じつつある。

 

乗務員でソナー担当のヘルマン・オスカル・スアレスの夫人イタティ・レギサモンはあるテレビ番組の取材で

「(乗組員の)家族は余りにも無知で、彼らが今も生存していると思っているのだ」

「未亡人として受け入れることを決めた。他の彼女らも残念ながらそうなのだ」

と語ったことが災いして、海軍本部に戻った時に殴られそうになったり、また別の数人から侮辱されるようになったそうで、本部を去って帰宅することに決めたという。

セルソ・オスカル・バリェホスの姉妹の一人は、無事な生還を願って断食を始めたという。

そして、「潜水艦で起きたことは、我々がどこまで信仰を続けることが出来るのか試すための神様との挑戦だ」と述べ、皆が団結すれば奇跡も起きると感じているという。

 

安否についてはかなり厳しい状況にあるが、待っている家族へのケアも必要とされている。

 

 

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