清宮も入所 「時代錯誤」のプロ野球合宿所

 

大きな見出しを見て、本人はどう思っただろうか。

6日付の日刊スポーツは1面でデカデカと「清宮 恋愛禁止」と報じた。

何事かと思ったら、日本ハムの栗山監督が、20歳まで恋愛や娯楽はひとまず置いて、野球に集中して欲しいと期待したという内容だった。

 

その栗山監督は規律正しい合宿所生活こそが「野球に集中」できるベースになると思っているに違いないが、昭和の頃に比べると大きく様変わりしたプロ野球界にあって、50年前と変わらないのがこの合宿所生活だ。

新人は既婚者以外、年明け早々に大きな荷物を持って合宿所に入り、同僚や先輩たちと同じ釜の飯を食うことになる。

 

例えば、清宮が入る日本ハムの勇翔寮は千葉県鎌ケ谷市のファイターズタウンの敷地内にある。

かつてはダルビッシュや中田翔もここで寝泊まりし、今オフメジャー移籍が濃厚な大谷の生活拠点でもあった。

大谷は栗山監督の方針で外出は許可制になっていたが、清宮にも「当然も当然!」とこれを適用すると明言している。

 

だが、プロ野球ファンの菅野宏三氏(ビジネス評論家)は、

「合宿所で共同生活させて管理するのは時代錯誤」

と言って、こう語る。

 

「社会では18歳は大人として選挙権を与えたわけですし、プロ野球選手というのは個人事業主です。解雇されたら倒産を意味する。自立心を持たせることが、選手としての成長にもつながるはずです。

合宿所では人間形成に力を入れているという球団もあるそうですが、そんなことは大人に対してやることではない。プロ野球選手になったら、まず自分で不動産屋に行って交渉し住居を借りる。食事は栄養面を考えて3食取る。サラリーマンはみんなやっていることです。

自己管理とは程遠い、合宿所での画一的な選手管理は、個性のある選手が生まれない要因にもなっている気がします」

 

巨人OBで、引退後は巨人、日ハム、社会人などの投手コーチを歴任した高橋善正氏は2008年から4年間、母校の中大野球部監督も務めた。

 

その経験からこう語る。

 

「例えば、注目されている清宮君の場合は、野球部の寮ではなく自宅通いで高校生活を送り、それなりに自由な環境の中でこれだけの成績を残した。

合宿所に入れて、恋愛もダメ、外出もダメなんて制限したら、かえって野球に集中できないのではないか。大学の監督をやってわかったことは、野球のレベルは昔より落ちているものの、鉄拳指導が幅を利かせていた昭和時代とは明らかに選手の頭の構造や意識が違うことです。

指導者の言いなりではなく、自分で考えたり、それを言葉にできる選手が多い。インターネットや携帯端末機の普及で貴重な情報も瞬時に得られるし、世間の動きにも敏感です。

自分というものを持っている大人を、ひとつ屋根の下で生活させることが多くのプラスをもたらす時代ではなくなってきています」

 



■昭和時代と選手が違う

球児が憧れるプロ野球選手の平均寿命は9年と短い。

引退後も球界に残ることができるのはほんの一部。

多くの者は30歳前後と若いうちに「プロ野球」という鳥籠から、ある意味で球界以上に厳しい一般社会に放り出される。だからだろう。

現役時代は移動の手配はすべて球団がやってくれていたし、「オフの日は愛車を乗り回していた」というある選手は、引退したら地下鉄の切符の買い方も知らなかったという。

この選手は「まるで浦島太郎です」と言って笑っていたが、「それは大げさな話ではない」と、前出の高橋氏が続ける。

 

「野球ばかりやってきた大学生は20歳を過ぎても目上の人に『ちわっす』とか『ちーっす』という挨拶しかできない。

『そんな挨拶で就職活動していたら、面接会場にも入れないぞ』と言ったものですが、まともな挨拶ができない者はプロ野球選手にもたくさんいます。だからこそ、野球一筋の人間には早く一般社会に触れさせることが大事だと感じました」

 

ある球団職員に言わせれば、合宿所生活は球団のリスク管理にもなっているという。

「合宿所にいれば栄養不足や過多で体調を崩すことはないし、20歳まで車の運転を禁止すれば交通事故も起こさない。練習や試合に遅刻する者もいない。

それ以外にも、若い選手が繁華街などでトラブルに巻き込まれたり、写真誌の餌食になる危険性も低いですから」

 

この理屈は選手を子ども扱いしているというか、信用していないことに他ならない。

 

管理好きのデメリットは、時に現場にも見られる。

新人選手のフォームにすぐにメスを入れたりするのがそうだ。そんな手取り足取りの指導こそがコーチの仕事と勘違いしている者が少なくない。

制球難から死球が「癖」になり、今季は大いに苦しんだ阪神の藤浪などは犠牲者の典型ではないか。

 

二刀流の大谷のように「メジャーでやる」という夢を持ち続け、志の高い者は、単身生活だろうが結果を残すだろう。

プライベートで大酒を飲もうが、ギャンブルをやろうが、上手にオンとオフを切り替え、成功した選手もたくさんいる。

酒やオンナ、ギャンブルに溺れて結果が出なければ、その程度の選手だったということだ。

 

18歳が日本の現状、将来を真剣に論じ、考え、選挙で一票を投じる時代に、今も合宿所生活を強いることは、“野球バカ”を育成していることになる。

 

確かに、一社会人としての成長は独立してめばえるものかもしれませんね。

 

 

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