天才・阿部一二三が勝てないと思った柔道家とは?

 

2020年東京五輪開幕まで、10月28日であと1000日となった。

今夏、ブダペストで行われた柔道の世界選手権男子66キロ級で金メダルに輝いたホープ阿部一二三(20)=日体大=にインタビュー、東京五輪に向けた思いや目指すべき柔道家像に迫った。

◇  ◇

-東京五輪開幕まで残り1000日。ちなみに高校2年だった阿部選手が14年講道館杯、グランドスラム東京大会で続けて優勝して衝撃的なデビューを飾ってから今までが約1000日だが、ここまでを振り返ってどうか。

「長かったようで短かったかな。でもやっと世界チャンピオンになれた。負けも勝ちも経験して、すごく濃くて自分を成長させてくれた1000日でした」

 

-この1000日で一番成長した部分は。

「技のキレとか技術も増したけど、気持ちの面が一番。プレッシャーで絶対勝たないといけないと気負ってしまう部分があったが、最近は落ち着いて自分の柔道を出せるようになってきた」

 

-大学では組み手、寝技も改善した。

「技の入り方は(高校時代から)変わってないと思うけど、足技もどんどん出すようになったし、組み手もしっかり二つ持って間合いをとるようになった。あとは寝技も前より怖さがなくなった。大学に入ってから全体的にレベルアップしたと思う」

 

-これからの1000日への抱負は。

「東京五輪では圧倒的に勝って金メダルを獲りたい。そのための準備を一つずつやっていきたいですね」

 

-一方で、柔道は今年、男女個人で計7個の金メダルを獲ったが、そこまで騒がれていない印象もある。

「確かに、そういう気持ちはありますね。たとえば野球とかサッカーに比べるとまだまだマイナーやし、プロだけでなく高校野球も大きく取り上げられる。柔道ももっと大きく取り上げてほしいと思うこともあるけど、それ(活躍)をどう人気につなげていくかだと思います」

 

-その中で、阿部一二三という存在は柔道界の顔としても期待が懸かる。

「もっと取り上げてほしい気持ちはあるけど、それってなかなか難しいことじゃないですか?でもこうやって僕がたまにメディアで取り上げられたり、豪快な柔道とか面白いところを色んな人に見てもらって、柔道をやる人が増えてくれたら一番うれしいですね。影響力って言うんですかね?色んな人に柔道を知ってもらいたいです」

 

-ちなみに、今までサッカーや野球をやりたいと思ったことは。

「なかったですね。柔道しかやろうと思わなかった。柔道が楽しかったからでしょうね」

 

-小学生時代は試合でなかなか勝てない時期もあったが、練習が嫌にならなかったか。「でも強くなりたかったので。『今日練習したくないな』って時も、人より練習せなあかんっていうのはありましたね」

 

-阿部選手自身は周りから「天才」「怪物」と言われることについてはどう思う。

「天才だとは思ってないですね。練習あってこその自分だと」

 

-逆に自分の泥臭い部分を評価してほしいと思うことは。

「いや~それは全然ないですね。人から見て天才だと思うんだったら、僕はそれで全然いいと思う。自分がそう(天才)じゃないと思ってさえいればいい。おごらなければ」

 

-試合で圧倒的に勝っている、かっこいい部分だけ見てくれればいいと。

「そうですね。こっちはちゃんと練習はするので、そうやって(天才と)捉えてくれる人がいるのもうれしいですしね」

 

-全日本合宿にも参加し始めて3、4年経つが、今まで見てきた中で「ヤバいな、強いな」と思った柔道家は。

「やっぱり大野将平選手(リオ五輪73キロ級金メダル)はヤバいんじゃないですかね。絶対勝てないなと思いました。橋本壮市君(17年世界選手権73キロ級金メダル)もヤバいと思うけど、僕が大学1年の頃から(日体大に)出稽古に来ている時に、1日3本は手を合わせていたので、慣れはあると思います。今は何をかけてくるかもわかるけど、最初はボコボコにやられてましたね。

将平さんとも毎日2、3本やっていれば慣れるかもしれないけど、1年に2~3回とかしかやらないし、しっかり(組み手を)持ち合うので。(大野は)見ててもすごく強いし、きれいな柔道をするし、カッコいいなと思う」

 

-目指すべき柔道家像はあるか。

「一番は野村忠宏さんですよね。憧れの人なので」

 

-過去の柔道家の試合は見るか。

「結構見ますね。野村さんの映像が多いですけど。あとは井上康生監督の試合とか、吉田(秀彦)さんとか、篠原(信一)さんとか。軽量級だと昔の海老沼(匡)さんとか、(大野)将平先輩とか、高藤(直寿)君とか、高上(智史)君とかの学生時代の試合を見たりする」

 

-自分の試合映像は。

「たまに見たりはするけど、毎日見て『カッコイイな~』とかはないですよ(笑)」

 

-阿部一二三の考える「強さ」とは何か。

「強いって表現は勝ってでしかできないと思う。あとは内容。大野選手でいうと五輪で圧倒的に勝った。野村さんもそうだし、井上監督もシドニー五輪の決勝で一本勝ちした。そういう印象っていうのはすごく大事だと思う。相手を豪快に投げて、それで優勝すると『強いな~』ってなると思う」

 

-五輪の決勝で一本勝ちすると、テレビで何回も映像が使われる。

「そういうのはありますよね。内容を含めて圧倒的に勝つ。勝敗が一番デカいと思いますけどね」

 

-柔道家は人としての強さも求められる。

「そうですね。気配りとか、当たり前のことが一番難しいけど、井上監督たちはそれを当たり前にできるので。僕もやっていきたいですね」

 

-日本男子の井上康生監督の指導は合理的だと評される一方で、理屈を超えた練習を課すこともある。

「そうですね。走るときはめちゃくちゃ走るし。『え、こんな走るん?』みたいな。限界を超えろって感じですかね。でも試合は何が起こるか分からないので。想定外のことも起きる。

(メニューが)すごくきついなって思うこともあるけど、スイッチが入ってしまえば案外できちゃうので。実感としても、これだけやってきたから絶対に負けないという気持ちになる」

 

東京五輪の男子柔道・・・楽しみですね。

 

 



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