なぜ小池百合子は「仲間」との写真撮影に「3万円」を徴収するのか

 

単なる「銭ゲバ」か、それとも稀代の勝負師ならではの「狙い」があるのか――。

 

「希望の党」を立ち上げて代表に収まってから、やることなすこと注目を集めている小池百合子さんが10月1日、党公認候補予定者らとポスターやチラシに用いるためのツーショット写真の撮影を行ったのだが、そこで「撮影料」として「3万円」を徴収したという。

「いくら選挙資金に困っているからって仲間からカネを巻き上げるなんて」

「知名度のない候補者が小池人気に便乗しようとしてるんだから、それくらい当然だろ」

「アイドルのイベントよりも高い、ボッタクリだ!」

 

……などネット上ではさまざまな意見があふれているが、ほとんどに共通しているのは、小池さんがこの「有料撮影会」を催したのは、「カネ集め」のためということだ。

 

確かに、「3万円」という金額を聞けば、誰だって政治家が選挙前になると、オークラだ、帝国ホテルだとこぞって催す政治資金パーティーの「会費」を連想する。

 

ホテルの宴会場を貸し切って、盛大なパーティーを催すよりも、1人数分の雑談と握手でチャリンチャリンと稼いでいく。

なにかとつけて、「ワイズスペンディング(賢い支出)」をリピートする小池さんらしい効率の良い「カネ集め」と言えなもくなもない。

 

だが、個人的にはこの「有料撮影会」は世間で言われていることだけではない、小池さんならではの「狙い」があるような気がしている。

というのも、既にお気付きの方も多いかもしれないが、このようなイベントをやることで、小池さんには「カネ集め」を遥かに上回るだけの大きなメリットがもたらされているからだ。

 

それはぶっちゃけて言ってしまうと、「ダメ候補者のあぶり出し」である。

 

●「自分の実力では選挙に勝てない」という共通点

「当選」という身分保障が欲しいため、政策や信念を二の次に、とにかく人気のある党首にくっ付くコバンザメのような「ダメ候補者」に限って、議員バッジを付けた途端、自らの実力で当選したかのように勘違いし、おかしな発言をして世間から嘲笑の的となったり、離党を繰り返したりという「問題議員」になりがちだ。

3万円を握りしめて「小池百合子握手会会場」に列をなした人々は残念ながらそんな「ガラクタ議員」になってしまう可能性が高い。

彼らは「自分の実力では選挙に勝てない」という共通点があるからだ。

 

地元でそれなりに活動をしてきて、支持者や後援会を固めてきた候補者ならば、「希望の党」というネーミングと、党首である小池さんの「お決まり写真」をポスターのどこかに添えるような戦い方でもいいはずだが、それだけでは不安で、「小池代表との近さ」を有権者にアピールしたいということは、「実力だけでは勝てる自信がありません」と申告しているに等しい。

このような政治家として明らかに「力量不足」の人たちを正確に把握しておくということが、実はこの「有料撮影会」の真の「狙い」ではないのか。

 

戦争を始めようと思ったら、まずは自分たちの力を客観的に見極めなければいけない。

どこに攻め込まれたら危ないのか、どこは鉄壁の守りなのか。

この分析は「選挙戦」でも同じだ。

 

弱い選挙区は、党として補強しなくてはいけない。

特に、「希望の党」は小泉進次郎氏のように、応援に駆けつけて戦局をガラリと変えることができる「スター」が圧倒的に少ない。

実力はないけれど「小池旋風」に乗ってどうにか国会に返り咲きを、というような明らかな「ダメ候補者」をあぶり出して容赦なく切っていく、という「選択と集中」が求められるのだ。

 

つまり、今回の「3万円で握手写真」というのは、シビアな戦いを控えて非情な決断をしなくてはならない小池さんが仕掛けた、「ダメ候補者」を正確にあぶり出すための「踏み絵」という可能性があるのだ。

 

●「3万円の撮影会」を開催しながら、値踏みしていたのでは

事実、小池さんは結党後、東京都庁での記者会見で、民進党の資金と組織力を頼っているのではないかという指摘に対して、以下のように答えた。

 

「お金欲しさにうんぬんと批判される方、それは全くの間違いでございます。今回、しがらみのない政治をやっていくためには、お金のしがらみからつくってはいけません。

そういった意味で、今回、希望の党で公認候補として戦っていただく方は、自前の努力で出馬、そして選挙戦を戦ってもらうということを条件としています」

 

「3万円の撮影会」を催しながら、小池さんはひとりひとりの候補者に対して、自分の知名度にどこまで頼っているのか、「自前の努力」がどこまできるのかを値踏みしていたのではないか。

 

候補者の政治信条の「踏み絵」として、「安全保障」や「憲法改正」を突きつけたように、民進党から流れてくる海のものとも山のもとも知れぬ候補者たちの実力をはかる目安として、「撮影料3万円」を突きつけたのではないのか。

 

いやいや、いくら「策士」として知られる小池さんだって、写真撮影ごときにそこまで深い意味はないだろ、と思う方も多いかもしれない。ただ、小池さんの政治家としてのキャリアを振り返ってみれば、新党に群がる「ダメ候補者」の見極めなどやって当然というような印象もある。

 

ご存じのように、小池さんは1992年にキャスターから政界へ転身後、「渡り鳥」なんて言われるほど新党を渡り歩いているのだが、「党首や政党の人気に便乗するダメ候補者」が登場したのは、まさにそんな「新党ブーム」の時代だった。

 

小池さんが小沢一郎さん率いる自由党へ移って、広報委員として「剛腕・小沢一郎」というブランディングにいそしんでいた1998年の参院選に、今では当たり前となった「ダメ候補者」の萌芽がみてとれる。

 

『「候補者の大きな顔写真と名前」が定番の選挙ポスターに交じり、党首の顔写真とげき文を添えたポスターが公営掲示板に並んでいる。

知名度不足に悩む新人陣営が「党首への期待を票に結びつけよう」とひねり出した苦肉の策。たすきに党首の名前を入れる候補者まで現れた』

(読売新聞 1998年6月29日)

 

2000年代に入ると自民党でもこの手法はよく使われるようになったが、当時はまだ「野党」の専売特許だった。

 

当時、結党したばかりの民主党では菅直人代表が今の小池さんばりの人気者で、民主党の知名度ゼロ候補はみんなポスターに「菅直人とともに」、チラシには「菅さんの秘蔵っ子」という文言を入れた。

 

「おたかさん」フィーバーで勢いのあった社会党で、土井たか子党首とのツーショット写真と「私が選んだ人」「よろしくたのんます」とポスターにのるようになったのもこの時期だ。

 

小池さんのいた自由党もご多分にもれず、候補者のポスターは、小沢一郎さんとのツーショット写真があふれかえった。

こういう「ダメ候補者フィーバー」を身をもって味わった小池さんが過去の教訓からなにかしらのアクションをとるのは当然といえよう。

 

安倍晋三首相が「希望の党」の結党を受けて、街頭演説で「新党ブーム」と重ねたように、小池さんがやろうとしていることは、1990年代にあった「新党ブーム」の再現である可能性が高い。

 

少数政党でもキャスティングボードさえ握れば、細川護煕さんのように総理になれるということを、誰よりもまじかで見ていた小池さんからすれば、「日本初の女性総理」という野望を達成できる、もっとも現実的なシナリオはこれしかない。

 

そういう「新党ブーム」の再現をしようと小池さんが考えた時、あの時代に生まれた「党首の人気に便乗して国政にもぐりこむダメ議員」のなかであまりにもヒドいのをリストラ対象者にしていく、というのはごくごく自然な政治判断といえる。

 

安倍首相は街頭演説で「希望の党」をけん制するため、「新党ブームによって日本に混乱と低迷が訪れた」と言って物議を醸した。

混乱や低迷はよく分からないが、ひとつだけ断言できるのは、新党ブームによって、日本の有権者の政治に対する関心はガクンと落ちたということだ。

 

「党首の人気に便乗する」という戦い方が広まったことで、もともとたいして興味のなかった政策などさらに関心がなくなる。

知名度ゼロでも党首の人気で当選するので、議会には活動も政治信条もよく分からないマイナー政治家があふれかえる。

そんなマイナー感のある人たちが駅前で、どこかで聞いたことのあるような政策を訴えても心に刺さるわけがない。

 

1990年代のこんな光景が繰り返されない事を祈ります。

 

 



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