盲目のロング・スナッパーの奇跡!!

 

全米大学フットボールの2017年シーズンが始まっている。

南カリフォルニア大(USC)はAP通信ランクの6位。

開幕から2試合を終えて順調に白星を2つ並べた。

いや、それで注目しているわけではない。もっと目を向けてほしい“物語”がこのチームにはある。

 

USCは開幕戦のウエスタン・ミシガン大戦でロング・スナッパーのジェイク・オルソン(2年)を起用。

場面はインターセプトからTDを奪って48―31とした第4Qの残り3分11秒だった。

 

ロング・スナッパーは本来オフェンスラインのセンターが陣取る位置に立つ。

役割は背後にいるホールダーを務める選手にボールをスナップし、キッカーにボールを蹴らせること。

ただしオルソンは1メートル91という恵まれたサイズを持ちながら、なかなか出場機会には恵まれなかった。
理由は明白。

 

なぜなら彼は眼球を2つとも失っているからである。

 

網膜芽細胞腫。

彼はこの病気のために生後10カ月で左目の眼球摘出手術を受けた。

眼球内に発生する悪性腫瘍。患者の10~30%が両眼性と言われ、12歳のとき、右目の眼球も失った。

その時、大のUSCファン。最後の願いは「トロージャンズ(USCのニックネーム)の練習を間近で見たい」だった。
当時のピート・キャロル監督(現NFLシーホークス監督)はジェイク少年に手をさしのべた。

手術前日の夜間練習を見学。

眼球を失っても、その光景は脳裏に強く刻まれた。
それから8年。

「それでもフットボールをやりたい」とオルソンは自分の夢を捨てなかった。

ケベックという名前の盲導犬を連れて授業に行き、ジムで汗を流し、チームメートたちの助けを借りて練習を重ねた。

ロング・スナッパーといってもラインマンの1人。だから体重も18キロ増やした。
そして9月2日。

ついにその時がやってくる。

第3Qまで21―21。出番はないかと思われた。

ところが第4Qに入ってUSCは猛攻。みるみる点差は開いていった。ここでチームを率いるUSCのクレイ・ヘルトン監督が背番号61のロング・スナッパーに

「準備はできているか?さあ、おまえのプレーをやってこい!」

と声をかけた。

 

練習からつきっきりで面倒を見ているホールダーのワイアット・シュミット(2年)の肩に手を添えてオルソンはスナップする場所まで歩を進めた。

その時、ヘルトン監督はウエスタン・ミシガン大のティム・レスター監督にアイコンタクト。

それは「よろしく頼みます」と語っているかのようだった。

 

通常ならディフェンスのラインマンが圧力をかける場面。

しかしボールの位置を声を出して教えた審判も含め、フィールドにいた全員がオルソンを支えた。
敵将はフィールドにいた自軍の選手に

「いいか、彼(オルソン)に触れるんじゃない!君らは今、フットボールよりもはるかに大事なことをやろうとしているんだ」

と指示。

 

オルソンがスナップしたボールは十二分なスピンを得て8ヤード先にいたシュミットの手元に届く。

練習通りだった。

中腰のシュミットがすぐにボールを立てると、キッカー、チュース・マグラス(1年)が右足を振り抜く。

楕円形のボールはポストの間を通過。

その瞬間、USCに1点がもたらされた。

 

オルソンは

「フィールドに立ちたかった。だから一生忘れない瞬間になった。信じられないよ」

と感無量の面持ち。

 

スタンドで見守っていた母シンディーさんも

「思わず叫んで跳び上がってしまいました。ジェイクが夢を叶えたんですから…」

と声を詰まらせた。
その方が無難な人生を歩めるとでも脳が勝手に思うからなのか、人間はすぐに可能性を否定する。

言い訳を作りたがる。

その一方で、信念と熱意に満たされた夢と希望はなにかしら形になって現れる。
ジェイク・オルソンが勝ち取った1点。

その1点は多くの人の心を揺り動かした。

あの時、練習を見学させたキャロル前監督は「涙が止まらなかった」と号泣。

そのプレーはUSCが所属するパック12カンファレンス・スペシャルチーム部門の週間最優秀賞に選ばれた。

 

 

「いい訳」は自分を正当化すること・・・

『だって、〇〇だったから。』とか・・・

 

彼のように「いい訳」すら出来ない状況では成し遂げられるんですね。

 

 



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