夏の甲子園 いい話④

2017/07/25

甲子園にはいろんな物語があります。

 

甲子園球場でスポットライトを浴びて活躍する選手ばかりではありません。

 

高校球児にとっては、たったの3回しかない高校野球の夏です。

勝ち続けて優勝を手にするのは本当にわずか、惜しくも勝ち続けることができなかった球児が大勢います。

地区予選で負けて泣いた球児もいれば、甲子園に出場して決勝で涙を飲んだ球児もいたことでしょう。

 

 

夏の甲子園大会に臨んだ親子のお話です。

 

 

今から4年前。

野球部員の息子は高校3年生でした。

高校球児の最も重要な3年の夏の県予選を前にした、5月の練習試合でのことです。

 

その日はバッティングも守備も調子が良く、監督からも『この調子ならレギュラーでいける。』と言われ、なかなかレギュラーになれなかった息子はやっと努力が報われたと思っていました。

 

しかしその試合の途中、1塁から3塁への走塁の際にスライディングした後から、太ももに痛みが出始め、だんだん激痛にかわっていったのです。

 

日曜日のため、一旦自宅に帰り、アイシングしましたが痛みは良くなりませんでした。

 

翌日病院に行くと、案の定、太ももの筋肉が肉離れを起こしていました。
お医者様の説明では全治3週間

 

経過によってはそれ以上かかるかもしれないとのことでした。

主人と一緒に怪我の説明を聞いていた息子の顔が『全治3週間』と聞いた途端、みるみるこわばり、落ち込んでいきました。

無理もありません。

夏の甲子園、県予選のレギュラー発表前という高校球児にとって1番大事な時期に怪我をしてしまったのです。

『怪我が治るの、県予選に間に合わないかもしれない。』

もう絶望的な思いだったでしょう。

 

保険適応ではないのですが、自費治療で高圧酸素治療をすれば早い回復が期待できるため受けることにしました。

毎日の学校や病院への送り迎えは夜勤明けの主人と協力しました。

 

チームメイトが練習している間はリハビリや上半身のトレーニングのため毎日病院に通いました。

練習できない息子はどんなに焦り、辛かったことだと思います。

 

 

そして3週間後のMRI検査の結果、お医者様からやっと練習開始の許可が出ました

 

1週間もしないうち、練習を終えて帰宅した息子が珍しく『話があるんよ』と声をかけてきました。

そして一言一言、絞り出すような声で話し始めました。

 

 

「父さん・・母さん・・・。今まで自分が野球するのを応援してくれたのに・・・。

レギュラーになれなくって、本当にごめんなさい・・・。

自分が野球をするのに、いろいろと支えてくれて本当に感謝してる。

毎日お弁当作ってくれたり、父さんは怪我した時に『治るための治療はしっかりお願いします』って高圧酸素の治療をすぐに受けられるようにしてくれて、本当いっぱいいっぱい応援してくれてたのに、レギュラーなれなかった・・・。

本当にごめんなさい。

今日自分から監督にレギュラー候補を断ったんだ。怪我のブランクで自分でダメだとわかったから。

ベンチにも入れないけど、怪我をした自分よりも動けるメンバーがベンチに入るべきだと思うし、自分はチームが頑張るために他にできること考えていこうと思うんだ。


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応援してくれてたのに、本当に・・本当にごめんなさい」

 

 

涙をこぼしながら話す息子を前に主人も私も思わず涙をこぼしていました。

一番辛い事を、きちんと自分で答えを出し、監督に伝えてたのです。

 

 

そして、主人が

 

「ごめんなさいって、いうのは違うと思うよ。

自分が今まで本当に努力して頑張ったのに報われなかった。こんな時は自分が一番辛くて悲しい気持ちだと思う。やけになってしまう人もたくさんいる。

でも、お前はちゃんと親に話してくれた。レギュラー取るのも大事だけど、それができなかった時に、チームを支えたい気持ち、今まで支えてくれた人への感謝を伝えられる。

これは本当に素晴らしいことだとだよ。すごいことができるようになった。

きっといいチームメンバーのおかげなんだろう。

これからの人生のなかで、絶対に今の思いは自分の支えになるよ。

こちらこそ、ありがとう。これからは自分が言ったように、チームの中でお前がみんなを支える方法しっかり考えていきなさい。

それがチームや監督、みんなの力になるよ。」

 

 

息子の野球人生、怪我のために本当に残念な結果に終わってしまったと思っていました。

でも、主人のいう通りこんなしっかりと感謝の気持ちを伝えてくれるなんて、本当に我が子ながらとても感動しました。

 

努力が報われなかった時に本当に辛かっただろうと思います。

 

でも怪我をした息子にきっとチームメイトがいろいろと声をかけてくれ、支えてくれていたのでしょう。

 

私も息子にどういう言葉をかけてあげれば良いのかわからず、ひたすら見守るしかありませんでした。

でも、息子はちゃんと自分で答えを見つけていたのです。

こんなにも素晴らしい事を学んでいてくれていたのです。

 

 

その後、夏の県予選大会では後輩達の先頭にたって、道具運びや試合中の声援でひときわ目立つ息子の姿がありました。

 

結果は残念ながら県予選の試合は負けてしまいました。

 

引退後それぞれの進路に進んでも、も野球部の仲間とは連絡を取り合い交流が続いています。

 

結果よりも過程が大切な事もある、と親子で学んだ夏でした。

 

 

地区予選一回戦で敗退した選手。

県大会決勝で敗退した選手。

甲子園決勝で敗退した選手。

そして、レギュラーになれずベンチにも入れず、観客席で必死に応援している選手。

 

 

いろんな甲子園がありますね。

 

 

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