「ひふみん」こと加藤一二三さん引退

将棋界で60年以上、プロ棋士として活躍してきた史上最年長の加藤一二三九段が、20日の対局に敗れ、現役引退となりました。

 

ことし1月には将棋界で史上最年長の棋士となりましたが、順位戦の最も下のクラスでも成績が振るわず、日本将棋連盟の規定により、進行中のタイトル戦の予選などがすべて終わった段階で引退となることが決まっていました。

 

加藤九段は20日、東京の将棋会館で負ければ最後となる竜王戦の予選の組を決める対局に臨み、54歳年下の高野智史四段(23)と戦いました。

 

対局は加藤九段が得意な矢倉戦法を高野四段が受ける形で進みましたが、終盤を前に高野四段が優勢となり、午後8時10分すぎ、98手までで加藤九段が投了。

 

加藤九段は残された対局がなくなっため、現役引退となり、誰よりも長く続いた棋士生活に終止符を打ちました。

 

対局中の旺盛な食欲で知られる加藤九段、最後の対局の20日にも昼に「うな重」、おやつにチーズを1パック食べました。

また夕食の出前では「鶏の唐揚げ定食」と「カキフライ定食」を注文しましたが、夏はカキフライ定食がないと告げられると、「天ぷら定食」と「冷やしトマト」を注文していました。

 

77歳ですよ!!

 

対局は2人とも、加藤九段が得意とした「矢倉」の戦法で攻め合う展開となりましたが、次第に加藤九段の形勢が悪くなりました。

 

最終盤、加藤九段は席を立つことが多くなり、午後7時40分ごろからは20分ほど席を空けました。

 

そして、対局室に戻り「感想はあとで送るので、感想戦はなしで」と告げたうえで、高野四段に「負けました」と伝えて投了しました。

 

このあとすぐに席を立ち、感想戦や報道陣への対応を行うことなく、あらかじめ呼んでいたタクシーに乗り、将棋会館をあとにしました。

 

 

経緯を説明した日本将棋連盟の森下卓理事は

「最後の対局とあって、気持ちが収まらなかったのだろう」

と心情を察したうえで、

「記者が集まる対局で感想戦をしないのは異例のことだ」

と話していました。

 

 

中原誠十六世名人は

「加藤一二三さんとは多くのタイトル戦で戦いましたが、もっとも印象的なのは第40期名人戦です。七番勝負ならぬ十番勝負となって約4か月かかる激闘で、いまとなっては懐かしさがあります。現役生活、長い間ご苦労様でした」

としています。

 

 

羽生善治三冠は

「現役生活63年は空前絶後の大記録です。長年に渡りお疲れ様でした」

とコメントしています。

 

 

また、加藤九段のプロ入りの最年少記録を62年ぶりに塗り替え、デビュー戦で対局した藤井聡太四段は

「加藤先生、長い間お疲れさまでした。先生と対局しその迫力ある指し手を体感できたことは僕にとって大きな財産になると思っています。ありがとうございました。これからもさまざまな方面でご活躍される事を楽しみにしています。」

というコメントを寄せています。

 

 

 

「あと何分伝説」とは?!

 

その強すぎる個性が生み出す伝説はたくさんあります。

その中でも有名な加藤一二三の「あと何分伝説」。

これは、対局中に「あと何分」と何度もしつこく聞くことから生まれました。

秒読みに入っても、時間切れになっても「あと何分」と繰り返す加藤一二三に記録係はぶちギレ、解説者は大爆笑。

神聖な対局がまるでコントさながらでした。

 

しかし強すぎる個性もさることながら、1分間のひらめきが天才的なことから「1分将棋の神様」と呼ばれるゆえのこだわりなのかもしれません。

 

 

 

カトリック教徒の家族、子供、妻は?

 

加藤一二三は昭和46年に妻・紀代と結婚していますが、2012年に金婚式を聖イグナチオ教会で行っています。

加藤一二三は敬虔なカトリック教徒で、洗礼名はパウロ。1986年にはローマ法皇ヨハネ・パウロ2世から、聖シルベストロ教皇騎士団勲章を受章していて、「有事の時は馬に乗って馳せ参じねば」らしいのです。

 

もちろん1男3女、4人の子供も父、加藤一二三にならって熱心に信仰しているため、幼いころは家族揃ってミサに参加したり、食前の讃美歌、夕食後の祈りは常だったそうです。

 

現在、加藤一二三夫妻は教会の結婚講座をやっています。

 

そして長男、長女ともカトリック系の上智大学卒業、次女は修道女になって白百合女子大学の講師、三女はスペインの聖フランシスコ・ザビエル教会で婚約式、というように全員信心に沿った生き方をしているカトリック家族です。

 

 

 

羽生善治は相思相愛?!二人の関係、対談が面白すぎる

 

「無人島に行くとしたら何を持っていくか」と聞かれ「羽生さん」と答えた加藤一二三。

加藤一二三曰く2人は会話がよくかみ合うのだそうで、2時間しゃべりっぱなしでも飽きないそうです。

一方の羽生善治も著書「決断力」中で、どんな時も自己貫徹している加藤一二三に敬意を表していたようです。

 

それには破天荒でおかしな行動も含めまれるようで、早口でしゃべり続ける加藤一二三を見ている時や、かなり個性的な食生活に言及する時も、愛おしそうに笑みを浮かべているのがテレビでもよく見られます。

 

過去の対戦では、羽生善治の「神ががりな手」による大逆転で敗北した加藤一二三ですが、彼への敬意から「羽生善治論 天才とは何か」という著書出版に至り、神武以来の天才と大天才棋士の相思相愛という図式が完成しました。

 

無人島に持っていくものについて「加藤一二三先生」と、ユーモアと愛情で即答した羽生善治に、加藤一二三は「私はモーツアルトのCD」といじわるな返しをするのがまた面白いですよね。

 

この2人の対談を是非ご覧ください。

 

 

 

ここまで長年戦い抜く知力と、風邪もひいたことがないという体力を支えてきた秘訣は、マツコデラックスをも驚愕させた大食漢ぶりにあるでしょう。

 

対局の休憩時には2食分の定食を平らげたり、板チョコの重ね食い、3ℓもの飲料を一気飲み。

 

ウナギの食べ過ぎで病院送り・・・などなど、伝説化しているものでも列挙しきれないほどで、今ではそれが加藤一二三の愛すべきパーソナリティを形作っています。

 

そしてバラエティで見られる軽妙で怒涛のトーク。

 

これはもちろん、対局解説でも発揮されていて、「ひゃあ」「瀕死ですか」などセオリー破りの語り口調も愛すべきところです。

 

猫の餌付けで提訴されるなど、お騒がせなところもありますが、Twitterを通して将棋ファンと交流を図ることも忘れない加藤一二三は大衆の心をがっちり掴んで離しません。

 

「大山康晴十五世名人に勝って十段になった時、将棋の深さを体験し、生涯戦い続けていけるという自信を持った」

という加藤一二三さん。

 

 

ぜひ引退後も愛すべきクセ者として、テレビやSNSで、いつまでもお元気な姿をみせてほしいと思います。

 

 

 



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