話が通じない「共感障害」の実態

 

「夫が全然分かってくれない」「妻が急に怒り出した理由が分からない」そんなすれ違いを経験したことがある方も多いだろう。

夫と妻の認識の違いからくるギャップに焦点をあてた黒川伊保子氏の『妻のトリセツ』は、その夫婦間のギャップを埋めるための具体的な言葉、行動を提案し大ヒットとなっている。

しかし、現実には言葉や行動だけでは埋まりきらない、すれ違いや溝がある。

そのひとつが、夫婦の片方が脳が置かれた状況を認識しないために「当たり前とされること」ができない「共感障害」の場合に、相手がうつ病になってしまう「カサンドラ症候群」と呼ばれるケースだ。

聞き慣れない方も多いと思うが、黒川氏の新刊『共感障害 「話が通じない」の正体』によると、「カサンドラ症候群」とは以下のような症状だという。(以下引用は同書より)

 

「カサンドラ症候群は、発達障害の一種であるアスペルガー症候群の夫を持つ女性によく見られる症状である。共感によって機能している女性脳が、一切の共感を得られないで暮らしていると、自己価値が消失し、生きる意味を見失う。心が折れてしまうのだ」

 

アスペルガー症候群は、「共感障害」が生じるひとつの要因である。

「共感障害」は、「暗黙のうちに学ぶ」ということができないために、挨拶を返さなかったり、相手の話にうなずかない、同僚の片付けを手伝わないなど、周囲を困惑させることが多いという。
さらに黒川氏によれば、カサンドラ症候群は、夫婦間だけでなく、例えば職場の人間関係など、日常的に共感障害の相手と接する機会の多い場合にも生じることがあるという。

同書にはある30代女性が、共感障害の女性部下のせいで、眠れない、頭痛がする、ふとしたことで涙が止まらないなどの症状を呈するようになったという例が記されている。

 

「彼女の部下は、共感障害者特有の『聞いていません(言われていません)』を繰り返した挙句、人事部にパワーハラスメントを受けていると申告したのである。しかも、そのことを上司である彼女に告げたタイミングがすごかった。部下のために1時間ほどのヒアリングを行った、その最後に『どうしても今の仕事が嫌だったら、部署の異動を人事にお願いすることもできるのよ』と言ったら、『あ、それならもうしています。パラハラで訴えました』とさらりと言われたのだという」

 



この30代女性は、その日からカサンドラ症候群の症状に悩まされるようになったという。

たいていの場合、自分が気に入った部下だけで組織を構成することはできないだろう。

 

では、共感障害の部下が自分の部署に配属された場合、どうすればうまく人間関係を築くことができるのだろうか。

 

同書から、黒川氏の具体的なアドバイスをみてみよう。

「共感障害の部下が何かを見逃したら、見逃す心根を叱るのではなく、素早くタスク化してやるのである。「挨拶ができない」「会議資料を配ることを手伝えない」「エレベータのボタンが押せない」「相手のことばを復唱できない」「メモが取れない」……その度に、『こういうときにはこうするもの』とタスクとして切り出していく」

 

やる気がないかのように見えて、その実、「何をやればよいのか」が認識できていないという「共感障害」。

彼らはわかっていないだけで、「性格が悪い」「気が利かない」「使えない」わけではない。

「何をやればよいのか」が分かる手伝いをしてやりさえすれば、ルールを守り、忠実な腹心の部下になる可能性もあるという。

 

職場でのコミュニケーションの齟齬に悩む人は多い。多種多様な悩みのなかで「カサンドラ症候群」は一例にすぎないが、問題の本質さえ分かれば前に進める可能性があるのだ。

 

 

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