「蹴り上げ虐待」を受けた犬、現在の様子

 

 

「“とにかく早く返してほしい”と毎日のように電話やメールがあります。ですが、今あの飼い主に返したら、今度はこの子が殺されると思います」

そう語るのは動物保護団体「紫友会」代表の川村紫さんだ。

彼女は今、衝撃的な“ラブラドール蹴り上げ動画”で被害が明らかになった老犬を保護している。

 

きっかけは2月8日、ツイッターに投稿された1本の動画だった。

飼い主の50~60代の女性の後をよろよろと歩く白いラブラドール・レトリバー。

すると突然、飼い主は右足で犬の腹部を思い切り蹴り上げた。

犬は衝撃で倒れ込んだが、しばらくすると起き上がり、飼い主を見上げると、再びそばへとついていく。

しかし、数歩歩くと、再び飼い主の容赦ない蹴りが腹部を襲う──。

 

動画の投稿者が振り返る。

 

「午後5時頃、飼い主の女性が“おしっこしやがって!”と叫びながら自宅のガレージで絨毯を洗っていました。その時、そばにいた犬を蹴るのを目撃して、動画を撮影し始めたんです。

実はこの女性は犬の虐待だけでなく近隣で迷惑行為を繰り返していて、数十回は警察が来ています。でも、警察は注意のみで何も対処してくれなかった。ツイッターなら動画を見た人がたくさん通報して警察が動いてくれるかもしれないし、こうした問題に詳しい人がどうしたらいいか教えてくれるかもしれないと思って投稿しました」

 

紫友会の川村さんは、フェイスブックでこの動画を見て「一刻も早く助け出さなければ」と、映っている背景などから場所を特定。翌日に車で広島を出て、5時間かけて現場となった京都市伏見区の住宅地に到着した。

 

「まず自分の目で確かめなければと思い、近隣のかたのお話を聞いて散歩ルートを確認しました。夕方、飼い主が散歩に出てきたので様子をうかがっていると、突然リードを引っ張って犬を引きずり始めた。さらに立ち上がらないことに怒って蹴りだしたので、すぐに警察に“虐待している現場を見ました”と通報しました」(前出・川村さん)

 

警官が駆けつけると女性は騒ぎ始め、

「犬を奪うなら死んでやる」



「お前を刺し殺してやる」

「家を調べて火をつけてやる」

などと叫び、包丁を振り回したという。

 

女性は警官に取り押さえられた。

女性は「(犬が)家中におしっこする。そのしつけだった」と虐待を完全否定している。

 

保護されたラブラドールの名前はレイ。

16才で、人間でいえば90才過ぎの老犬だ。

そんな年老いた身に“しつけ”も何もあるはずがない。

 

「レイは飼い主との散歩中もずっと震えていましたが、私がリードを持って“おいで”と言ったら、足を傷めていたのに自分からぴょんと車に乗りました。それから警察の立ち会いのもと、帰宅した飼い主の夫の了承を受けて、私が保護することになったんです。すぐに夜間救急のある動物病院に連れて行きました」(前出・川村さん)

 

しかもレイは重度の膀胱炎、尿路感染、股関節炎症、脾臓の腫瘍など多くの病気を併発していた。

 

「高齢なので病気になることはあるにせよ、普通は尿路感染まで起こしません。獣医さんによれば、お漏らしをすると蹴られるのでずっとおしっこをがまんしていたのが大きな原因だと考えられるそうです」(前出・川村さん)

 

年齢を考慮して手術はせず、現在は痛みを取り除く治療とメンタルケアを行っている。

 

「最初はレイの横に立つと、それだけで蹴られると思うのかお腹に力を入れていました。今はだいぶ落ちついてきて、紫友会で保護している他のワンちゃんたちとも仲よくしてます。散歩もご飯も大好きで、“なでて、なでて”というように寄ってくることも。本当に穏やかでいい子です」

 

 

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