佐世保・小6同級生殺害「普通の子」と凶行の落差

 

長崎・佐世保 小6女児同級生殺害事件とは

2004年6月1日、長崎県佐世保市の小学校で、6年生の女児が同じクラスの女児を特別教室に呼び出し、首をカッターナイフで切りつけて失血死させた。

長崎家裁佐世保支部は同年9月、加害女児を栃木県の児童自立支援施設に入所させ、行動の自由を制限する「強制的措置」を認める保護処分を決定。

加害女児その後、08年春に施設内の中学を卒業し退所した。

この事件などを契機に少年法が改正され、少年院収容年齢は「おおむね12歳以上」に引き下げられた。

 

 

九州で2004年(平成16年)に長崎県佐世保市で、小学6年の女児=当時(12)=が同級生に殺害される事件が発生した。

この事件は私たちに何を残したのか。

当時取材した西日本新聞の記者が、再び現地を歩いた。

 

 

午前の仕事が一段落し、昼食を取ろうと街に出た時だったと思う。

突然鳴り出した携帯電話の向こうで、上司の声が上ずっていた。

 

「小学校で女の子が切りつけられたらしい。すぐに現場に行ってくれっ」。

2004年6月1日、長崎県佐世保市立大久保小学校。校門前にはすでに規制線が張られ、駆け付けた保護者たちで騒然としていた。

 

6年女児、同級生、カッターナイフ、首を切って殺害…。

断片的な情報からも、ただならぬ事態を想像できた。被害者は、同じ新聞記者として顔見知りだった毎日新聞佐世保支局長、御手洗恭二さん(60)の長女=当時(12)=だった。

 

前年には「駿ちゃん事件」と呼ばれる中1男子による幼児誘拐殺害事件が起きていた。

1997年の神戸連続児童殺傷事件、2000年の西鉄バスジャック事件…。

少年事件の凶悪化、低年齢化が叫ばれる中、ついに小学生までが手を染めた凶行。

「うそだろ」。

私の頭は混乱した。

 

加害女児はインターネット上にホームページを開設。

中学生同士が殺し合う小説「バトル・ロワイアル」をモチーフに実際の同級生らしき人物が登場する不気味な文章を残していた。

理解困難な女児の内面は、いつしか「心の闇」という言葉でくくられるようになった。

 

事件ではもう一人、心をずたずたに引き裂かれた少年がいた。

御手洗さんの次男で被害少女の兄。

当時中学3年生で現在29歳。

事件から14年間、開いた心の穴はふさがっていないという。

 



その後の生活は一変

あの日。5時間目の授業中、校長たちに呼び出された。

険しい表情の教師たちに囲まれ、事件を報じるネット速報のコピーを黙って渡された。

でもそれが妹のことだとリアルに考えることはできなかった。

夜、遺体安置所に連れていかれた。

横たわった妹の顔を見て、ようやく「死」を理解した。

初めて涙が出た。

その後の生活は一変。

ふさぎ込む父に「自殺するのでは」とおびえ、気丈に振る舞った。

だが高校に進学すると自責の念にさいなまれた。

事件前、妹から加害女児とのトラブルを相談されていたからだ。

「もっと助言してあげれば事件は防げたのではないか」と悩み、教室に入れなくなった。

加害女児とは一緒に遊んだこともあり、よく知っていた。

事件直前の運動会でもふざけて話しかけてくる「普通の子」だった。

だから、その後の凶行が信じられなかった。

女児の少年審判はインターネットでのやりとりや交換日記でのトラブルが引き金になったとしたが、到底納得はできなかった。

10年たった14年。

父と2人で女児の少年審判を務めた元裁判官と、女児の付添人弁護士に会いにいった。

だがいくら話を聞いても「普通の子」と凶行との落差が埋まることはなかった。

結局行き着いた答えは「分からない」だった。

もう「なぜ」を考えることはやめようと思った。

女児からは今も謝罪はなく、どこで何をしているのかも分からない。

普段は考えないようにしているが、時々苦しくなる。

「人を殺すことは悪いことですよね。悪いことをしたら謝りますよね。謝罪がないのは、まだ更生していないのではないかと思います」。

男性は今も謝罪を待つ。

事件を契機として、国は07年、少年院送致の下限年齢を14歳から「おおむね12歳」に引き下げる少年法の改正に踏み込んだ。

主な少年法の改正は平成に入って4度目だ。厳罰化が進む一方、凶悪事件を起こした少年たちの「その後」の情報は厳重に閉ざされ、事件からどんな教訓を得ればいいのか、有効な手がかりがつかめないまま記憶の風化が進む。

そして事件から10年後。

同じ佐世保市で高校1年生が同級生を殺害するという陰惨な事件が再び起きた-。

 

2004年当時、妻のおなかにいた私の長男は今年中学2年生。

あの頃の子どもたちと同じ世代になった。

子どもを被害者にも加害者にもしないために、私たちは何ができるのか。

 

「心の闇」はいつ解けるのだろうか。

 

 

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