ドラッグストアが「食品安売り」から脱出できない理由

 

ドラッグストアの食品売り場から安売りが消える日は来るのか――。

ドラッグストアといえば主力商品の医薬品や化粧品以外だと「加工食品や飲料の安売り」、そんなイメージがある。

しかし、ドラッグストアも百貨店の市場規模を抜いて6兆円超となり、これから10兆円市場を目指そうというタイミング。

「食品の安売りで客を集め、化粧品や医薬品を買わせるという商売でもないだろう」(あるスーパーの首脳)という声も出てきた。

● ドラッグストアにおける 「食品安売り」のカラクリ

コスモス薬品の食品売り場を見てみるといいですよ。とにかく安いですから」というスーパー関係者の言葉に背中を押され、出張帰りにコスモスの店頭を見てみた。

例えばインスタントラーメンのサンヨー食品の「サッポロ一番みそラーメン」(5食パック)が298円(税込み)で売られている。

この商品の価格を他社と比べると、ある大手スーパーのネットスーパーの価格は378円(税抜き)、大手ネット通販の価格は395円(税込み)だから相当安い。この商品だけではなく他の商品も他社に比べて安い。

コスモス薬品は業界でも突出して食品の売上高構成比が高い。

直近の決算では食品の売上高構成比が55%超で食品スーパーも顔負けの比率だ。

しかも、きちんと収益も上げている。直近の売上高営業利益率は4%を超えており一般的な食品スーパーと比べても利益率は高い。

「ドラッグストアは基本的に食品で儲けようと考えていませんからね」

と語るのはあるコンビニエンスストアの幹部だ。

 

ドラッグストアの安売りのカラクリはこんな感じだ。

食品で儲けず、食品のついでに粗利益率の高い医薬品や化粧品を買ってもらい儲けを出している。

コスモス薬品の場合は、それに加えてローコストオペレーションによる店舗運営で経費を抑えて経営していることも安く売れる仕組みの1つである。

すべてのドラッグストアがコスモス薬品と同じように食品を徹底的に安く売って儲けるというビジネスモデルかというとそうでもないが、食品の安売りを「集客の手段」としているチェーンは多い。

しかし、それも食品だけ「狙い撃ち」されたら成立しない。

そんな兆候もある。

● ドラッグストアの 生鮮食品はうまくいかない?

ある食品スーパーの首脳は「最近の消費動向を見ていると(安売りめがけて)消費者がいろんな店を買い回っている。それが、うちの客数減少にも表れている」と指摘する。

つまり節約志向が強まり、食品の中でも飲料や加工食品の安い商品はドラッグストアで買い、生鮮食品や総菜は食品スーパーで買うという行動が目立ってきたというわけだ。

「ドラッグストアの生鮮食品?あれはうまくいかないな」と話すのはドラッグストアも展開する大手スーパーの首脳だ。

加工食品や飲料の安売りと並び、ドラッグストアのトレンドになってきているのが、生鮮食品の販売だ。

日常必需品をワンストップショッピングできるようにと最近、生鮮食品を取り入れているドラッグストアも増えている。

 

だが食品スーパーの首脳は、自社のドラッグストアで生鮮食品も販売しているのに「うまくいかない」と切り捨てる。

世間的にはドラッグストアが今後、生鮮食品や弁当や総菜を取り込んでいくことで食品スーパーやコンビニエンスストアを脅かすなどといわれてきた。



にもかかわらず「うまくいかない」とはどういうことか。

「薬や化粧品の近くに置いてある肉や野菜は少し抵抗がある」と50歳代の主婦は話す。

便利は便利だが、イメージ的にどうかということもあるようだし、最大の理由は生鮮食品のノウハウの蓄積が少ないドラッグストアが野菜や肉、さらに消費期限の早い鮮魚まで手を出すのは難しいというのである。

加工食品や飲料の安売りの成功体験で、とにかく食品は集客力がある。

ならば生鮮食品もいけるとみたドラッグストア側の売り手の論理だろう。

 

● 「食」をめぐる 試行錯誤を続けている

ドラッグストアは生鮮食品の導入や弁当、総菜の導入をするところも多く「食」をめぐって試行錯誤を続けている。

実はドラッグストア売上高トップのウエルシアホールディングスでは東京・浅草の店舗でイートインスペースを設けてカレーライスの販売を実験している。

店内でカレーを調理して出しているわけではないようだが、店舗内にあるキッチンでご飯を盛り付け、カレーを販売している。

淡路島産のたまねぎを使った独自のカレーで価格は500円だった。

イートインスペースには地方の食材などを使ったレトルトのカレー数十種類も並んでいた。

イートインスペースでカレーが食べられれば「これから一人暮らしが増える時代、喜ばれるだろう」とカレーを始めたとウエルシアHDの池野隆光会長はあるインタビューでそう話している。

ドラッグストア市場10兆円を見据えた食品売り場はどうあるべきか。

ドラッグストアの業界団体である日本チェーンドラッグストア協会ではドラッグストアに求められる「食品売り場」の実験を進めている。

ドラッグストアでは機能性表示食品や栄養機能食品といったジャンルの食品を扱っている。

しかし、そうした商品だけを並べても買ってもらえないという事情がある。

実験では機能性表示食品など一般の加工食品などを合わせて商品を陳列したり、比較検討ができるような売り場を構築したりする見込み。さらに管理栄養士が中心になって食事相談に乗るといったコンテンツも検討されている。

ドラッグストア協会の実験では「病気予防」の見地から、食品の売り場を研究する見通しだ。

本来、ドラッグストアは医薬品で病気を治療するだけでなく、生活習慣を改善し病気を予防していくという機能を提供する立場にある。

しかしドラッグストアは「食品の安売り」が中心となっており、「食品を通じた病気予防」という観点の品ぞろえや売り方になっていなかったのだ。

 

● 食品の安売り一辺倒から 抜け出すことができるか

食品スーパーやコンビニエンスストアの領域と重ならない差別化された「食品売り場」の構築は急務だろうし、高齢化社会を迎えてドラッグストアに求められる機能としては食品の安売りばかりではないはず。

しかし、ドラッグストアがこうした「新しい食品の売り方」に転換していくかどうかは不透明だ。

食品の安売りが「成功体験」になっているためだ。

2025年に売上高10兆円を目指しているドラッグストア業界。

 

今後、食品安売りのゲリラ軍から健康・美容を売る正規革命軍に姿を変えるには、食品の安売り一辺倒だけではない「食品の売り方」が求められているのではないだろうか。

 

 

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