日大アメフト部 特待生らの苦悩

 

「特待生」ゆえの苦悩

 

「本当なら、日大アメフト部の現役部員が発表した声明文では、内田正人前監督や井上奨前コーチから悪質なタックルの指示があったことが明言されるはずでしたが、最終的にそこまで踏み込むことができませんでした。

それは加藤直人部長(日本大学副学長)らから選手の父母会に、忠告があったからだと聞いています。大学を批判する声明文を発表すると、『免除されている学費を払ってもらうことになるし、寮からも出ていかなければならない』と匂わされたそうなんです。

現役部員たちも一枚岩ではありません。3年生は同期の宮川選手を積極的に守りたいのですが、それを最優先に考えることができない選手もいるんです」(日大アメフト部関係者)

 

 

アメフト部では主力選手のほとんどが、授業料が免除される特待生だという。

さらに東京・中野区にあるアメフト部学生寮の寮費は月約2000円と破格に安い。

 

 

もし学費免除もなくなり、寮も出ていくことになれば、遠方から入学した部員は経済的な負担が大きくなる。

そうなれば学生生活を送ること自体が困難になる部員も出てくる。

そのため正面から批判することができなかったのだ。

 

 

さらに4年生と下級生とでは温度差がある。

「仕方のないことですが、4年生は今季の試合に出ることを半ば諦めてしまっています。それよりも無事に卒業して、就職することができるかに頭を悩ませているんです」(日大幹部職員)

 

 

日大アメフト部にOBが在籍している強豪高校の指導者はこう明かす。

 

「つい先日、教え子である日大アメフト部の新入部員と会いました。まだ入部して2ヵ月ほどですから、先輩たちの動きを見ながら、自分たちに今できることをやっていると不安げに話していましたね。

ただ退部の意思はないようですし、『部を辞めたい』と言っている1年生はまだいないようです。学長が部の活動を『早く再開させたい』と明言したので、彼らはその言葉を信じています」

 

 

関東学生アメフト連盟の処分が下り、日大アメフト部は今季の公式戦に出場できない。

入部して2ヵ月弱の新入部員は茫然としていることだろう。

 

「他の大学に入り直すには通常の試験を受けるしかありません。ですが、彼らが、これから受験勉強に取り組むことは難しい。

とくに残っている2年生は1年間も厳しい練習に耐えて、チームに愛着もありますから、今さら他大学でプレーしたいとは思わないでしょう。

社会人チームに練習生として参加して、大学卒業後に正式なメンバーとなる道もあります。ただし、練習生は公式戦に出られません。1~3年生が卒業まで何年間も練習だけというのは耐えられないと思います」(前出・日大アメフト部関係者)

 

 

現役部員に残された最善の道は、日大アメフト部に残ることなのだ。

だが、それもイバラの道だ。

 

 

日大アメフト部には13人のコーチがいるが、井上氏に加え、新たに3人が辞任した。

 

そのなかには学生連盟から資格剥奪の処分を受けた森琢ヘッドコーチが含まれている。

 

「辞めた3人は日大職員でも日大出身者でもありませんから、しがらみも少ないんです。ただ、森コーチを失ったのは大きな痛手です。内田前監督は励ますか脅すかだけで、戦術やテクニックを教えるノウハウがあるわけではありません。

しかも現役時代に大した選手ではなかったコンプレックスからか、名選手だった日大OBを遠ざけて、外部のコーチを招聘していました。そのなかで、森コーチは選手に寄り添い、人望もあったんです」(前出・アメフト部関係者)

 

内田前監督の後を引き取って、リーダーシップをとれる人間が誰もいない状況なのだ。

 

「大学側が内田前監督の息がかかっていない新監督を任命して、チームを立て直さないといけないのに、それが遅々として進んでいません。内田前監督に忠誠を誓うことを良しとせず、母校のコーチにならなかった優秀な指導者はたくさんいます。

ですが、内田前監督が大学の人事権を持つ常務理事を解任されるかどうか、まだアメフト部の有力OBたちが様子を見ている状況なんです」(前出・日大幹部職員)

 

 

日はまた昇る

来年度は新入部員も激減することが確実。

このままでは休部もありうる。

 

だが、前出・日大アメフト部関係者はこう言う。

 

「たとえ今季のリーグ戦に出られずに、1部リーグの『TOP8』から降格しても、来年度に公式戦復帰すれば、1年で間違いなく昇格できますし、再来年には甲子園ボウルを狙えるでしょう。それぐらい圧倒的な実力が日大アメフト部の1~2年生にはあります」

 

 

学生連盟からの処分が出た翌日、本誌は学生寮に帰宅する現役部員に声をかけた。

 

――アメフトを続けたい気持ちがありますか?

「あります」

 

彼は真っ直ぐ前を見据え、そう頷いた。

 

 

現在、日大アメフト部に卒業生が約10人在籍している大阪産業大学附属高校アメフト部の山嵜隆夫監督がエールを送る。

 

「日大のフットボールは、かつての篠竹幹夫監督の時代からサムライ魂を感じさせるものがありました。一方、関学はスマートなイメージ。是非の問題ではなく、それぞれのカラーなんですね。

今回の事件は、日大の行き過ぎた上意下達が原因だったと思います。内田さんは、黒いものでも白だと言い張るなら、なぜ白なのかを合理的に部員に納得させる必要があった。

今後、指揮系統を含めた指導方法は根本的に変革していく必要がある一方、愚直なまでのプレースタイルは維持してほしい。不易流行です。

今回の事件を変革の機会と捉えて、日大アメフト部員には、今後、変えるべきものと伝えるべきものをよく見定めて、再生のための一歩を踏み出すことを期待しています」

 

 

アメフトを愛する若者たちが試合に臨める日は必ず、来る。

 

 

 



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