片山の失態 大問題になった背景

 

プロアマ戦で片山晋呉(45)が犯した失態の波紋が広がっている。日本ゴルフツアー機構(JGTO)は、このほど懲戒・制裁委員会で片山の処分を検討すると発表した。

 

理由はツアー選手権森ビル杯開幕前日に行われた5月30日のプロアマ戦でアマチュアの招待客に不快感を与え、プレーを断念させたこと。

 

青木功会長が「極めて深刻であると受け止めております」とコメントしていることから、何らかの処分が下されるのは間違いなさそうで、当該選手が「元3年連続賞金王」「ツアー通算31勝で史上7人目の永久シード選手」だけに、業界、世間に大きな衝撃を与えている。
 

関係者の話を総合すると、プロアマ戦の1ホールを終えた後、1つ前の組が詰まっていたため、片山はトーナメント(ツアー競技)に備えてそのホールのグリーンの傾斜、スピードなどをチェック、つまり個人の練習時間に充てていた。

 

ポケットに手を入れたまま対応するなど不遜な態度もあったため、招待客の1人が、片山の行為、対応に不快感を持ち、1ホールを終えただけでプレーを切り上げてしまったという。

 

プロアマ戦中にプロがグリーン、グリーン回りをチェックすることはよくあること。

その時の片山の態度が著しくひどかったのか?

とにかく何が招待客の気に障ったかは、現時点ではやぶの中だが、JGTOは、片山の態度を問題視して許さなかった。

 

ただ片山はトーナメントで故意の過少申告などの反則行為をしたわけでなく、まして刑事事件を起こしたわけでもない。言ってみれば舞台は「たかがプロアマ戦」である。

そこに疑問を感じる一般人は少なくないかもしれないが、ツアーにとってプロアマ戦は決して「たかが」でなく、重要なイベントなのだ。

 

プロアマ戦は、トーナメントの主催者、スポンサーが自分たちのクライアントを招いてもてなすイベントで、ツアー競技では本番前日、または前々日に催すのが通例になっている。

プロ1人とアマチュア3人が組み、その組のベストスコアなどで30組前後が競うコンペだ。

主催者にすれば、営業活動の一環でもあり、極論すればトーナメントの「冠」になる広告効果より、そちらを重視する向きもあるほどだ。

 

トーナメント1試合を開催するのに必要な資金は、男子で4億円、女子で3億円ともいわれる。

 

残念ながら、ツアー側は自力でそれをまかなう資金力がない。

そこに問題がなければ、プロアマ戦を行わず、トーナメントだけをしていけばいいのだが、そうはいかないため、主催者、スポンサーというツアーにとって“神様”の人々を接待するプロアマ戦が設定されている。

プロは、その大事なお客様をもてなす「ホスト」「ホステス」になるわけで、プロアマ戦では「賞金ランク上位者」「主催者推薦出場者=人気、注目度の高いプロ」を用意し、喜んでもらおうとする。
 

JGTOはプロアマ戦を体調不良などを理由に欠場、途中棄権したプロ、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は欠場したプロをツアー競技本番に出場させないルールを設けていることからも、いかにツアーがプロアマ戦を重要視しているかがわかるだろう。

 

そして今回、片山の行動をJGTOが大きな問題にしたのには、ある背景がある。

 

今シーズンの男女各ツアーのトーナメント数をご存じだろうか?

女子は3月頭に開幕し、11月末まで空き週がほぼない38試合を予定している。

対して男子はシーズン当初のアジアンツアーとの共催2試合を含めて26試合だけ。

 

女子の約3分の2しかない。

若く、かわいく、華やかな若手の台頭が著しい女子ツアーは各企業からのトーナメント開催打診が引きも切らない。

「どうせ接待するなら、かわいい女の子で」という理由も厳然としてあるし、男子より安上がりで済むこともあってバブルな状況が続いている。

 

一方の男子ツアーはどん底なのだ。

 

最大の目玉の松山英樹、石川遼は松山が米ツアーに専念、石川は今季、米ツアー出場権を失い、日本ツアーに戻ったが、不振続き。古閑美保の夫でもある小平智が米ツアー優勝してブレークしたものの、小平も米ツアーに目を向けている。

 

売り物になるプロがいないのだから、主催者、スポンサー離れが進んでも仕方ないのが、現状。

そのタイミングで片山の問題が起きたため、なおさら神経質になったという背景がある。

 

 

男子ツアーは90年代まで年間40試合近い試合数を誇っていた。

 

AONがいて、丸山茂樹、田中秀道らが若手で元気だった時代だ。

逆に試合数維持に必死だった女子ツアーは当時の樋口久子会長、岡本綾子副会長という「2枚看板」が企業回りに奔走する一方、プロに徹底した教育を施し、主催者、スポンサーへの意識を高めさせてきた。

 

そして21世紀に入って、宮里藍が出現、宮里藍を見てゴルフを始めた“藍チルドレン”の台頭があり、一気に女子ゴルフブームが訪れた。

 

男女の立場が逆転した今、青木功氏は、会長に就任すると昨年3月の女子ツアー開幕戦ダイキンオーキッドレディースのプロアマ戦に出場して、その実情を肌で知った。

 

「驚いた。お客さんのもてなし方や、競技の方法など大変勉強になったし、男子ツアーにも生かしていきたい」

と話していた。

 

女子に見習い、ようやく主催者、スポンサー対策に本腰を入れるようになったわけで、今回の騒動は、その矢先の出来事だったわけである。
 

プロにとってファンは必要不可欠な存在だろう。

 

ファンが増えなければ、各企業は広告効果も感じないし、トーナメント開催に興味を示しにくい。

 

本末転倒かもしれないが、ファンを増やす前に、トーナメントを成立させるために、各企業=主催者、スポンサーを増やさなければ、自分たちの生活の場が維持できないのは、厳然たる事実。

 

本来、スポンサーを集める営業は、プロゴルファーの仕事ではないのかもしれないが、そこで接待をしなければ、男子ツアーが存続できないという厳しい現実がある。

 

一人ひとりがその責務を負っているわけである。

 

片山だけでなく、すべてのプロゴルファーが今一度考えるべきもの―。

 

今回の騒動は、現在の日本男子ツアーが置かれている立場と、その構造を象徴するような事件なのかもしれない。

 

 



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