記者を怒鳴りつける麻生大臣を考える

 

首相官邸に麻生財務大臣の怒声が響きました。

4月27日朝、定例の囲み会見、幹事社が質問を終えたところでエアポケットのような間が出来ました。

 

その瞬間、麻生大臣はきびすを返して立ち去ろうとしました。

あわてた記者たちは、「大臣!大臣!」と呼び止めます。

 

出来事と言えばそれだけのことでした。

 

しかし麻生大臣は記者の「大臣!大臣!」という呼びかけの強さが不快だったのでしょうか、いきなり記者を怒鳴りつけたのです。

「最初から聞けよ、大きな声出さないで!」

大人が大人を本気で怒鳴りつけることなど滅多にありません。

 

それも場所は首相官邸、相手は記者です。

麻生大臣の記者への対応は往々にして乱暴で、時には事実と違った誹謗や威嚇まがいの言動があり、記者を「オマエ」よばわりしたこともあります。

朝日系メディアなどに嫌みなカラカイを入れるのも日常茶飯事です。

 

 

もともと「下々」には横柄な麻生大臣ですが、この日はとりわけ機嫌が悪かったのかもしれません。

セクハラ問題の福田前事務次官の懲戒処分を発表する日でしたから。

 

取り囲む記者に、麻生大臣は処分の理由についてこう語りました。

麻生『国会審議が止まるとか、財務省の信頼を貶めたとか、そういった点に関しての処分だと思います。元はセクハラ問題ですけどね。』

Q「福田氏は音声が自分の声だと認めたのですか?

麻生「知りません」

Q「セクハラの事実が出てきたら追加の処分は?」

麻生「あり得るでしょうね」

と、どうにもどこか他人事です。

 

処分の内容も「知らない」と言い切りました。

「セクハラ行為に対する処分」ではなく「信用失墜行為に対する処分」と言いましたから、麻生大臣が被害者に謝罪する気振りなどまったく見せません。

 

 

ところが数時間後、これらの麻生発言が悉く事実とかけ離れていることが財務省の正式記者会見で明らかになります。

 

この日の夕方、財務省の矢野康治官房長と伊藤豊秘書課長が正式の記者会見に臨み、以下の主旨を記したペーパーを配布した上で被害者に陳謝し、深く、長く、頭を下げました。

 

(1) 福田氏から有効な反証がなく、財務省は4月4日のセクハラ行為を認定

(2) 相当する処分は減給20%、6ヶ月(註)

(3) 被害者とテレビ朝日ならびに関係者に謝罪

(4) 調査は打ち切り、追加の処分はない

 

この内容は朝の麻生大臣発言とまったく違います。

当然記者から質問が飛びます。

 

朝の大臣会見以降、財務省の方針が変わったのか、と。

 

この日の朝、財務省はこの会見で配ったのと同じペーパーを首相官邸ほか必要各所に配布しています。

もちろん麻生大臣にも説明済みであり、朝から財務省の方針が変わっていないことは矢野官房長が認めています。

 

矢野官房長は、

「人事院規則ではセクハラは信用失墜行為という整理なので・・・。ご説明がうまく大臣に伝わらなかったのかも・・・」

と苦しいフォローにつとめますが、朝の麻生大臣の会見発言は(1)~(4)まですべて事実に反し、しかも麻生大臣はそれを知った上で事実と違う発言をしていたことになります。

 

 

財務省が福田氏のセクハラを認定し、懲戒処分をするとなると、麻生大臣は被害者やテレビ朝日に謝罪する立場になります。

それを嫌って事実を曲げた発言をしたと考えざるをえません。

記者たちは麻生大臣から誤報となりかねないウソを聞かされていたのです。

 

つい先日、3月29日、30日の国会における麻生大臣のTPP関連の発言もひどいものでした。

 

各紙がそろって一面など、大きく紙面を割いて伝えているTPPについて、

「日本の新聞には一行も載っておらず、それが日本の新聞のレベル」

と国会で言ったのです。

 

事実無根ですが訂正、謝罪したのは森友問題と比較したことだけ。

財務大臣の大虚言にペナルティはありません。

 

 

テレビや新聞で知る麻生大臣の発言は極めて短く編集されています。

それ故に伝わらない、事実を無視した発言、傲慢な発言、洒脱やユーモアとはかけ離れた人をバカにした発言は数知れません。

 

そして、自分の責任を無視して、頭を下げない態度も度々です。

 

それは謝罪会見に麻生大臣が出席しなかった事でも明らかです。

組織のトップたる麻生大臣は知らん顔で、頭を下げたのは民間会社で言えば役員クラスだけですから非常識です。

 

 

この幕引きには重要な意味が透けて見えます。

すでに麻生大臣の判断で調査結果を待たず即日で退職を認めていますから、決裁文書改竄時の理財局長であった佐川氏も、前事務次官の福田氏もとっくに一般人です。

二人とも本件とは別の「別件辞任」ですから経歴に懲罰はないはずです。

 

その上、どのような調査結果が出ても、財務省が一般人に懲戒解雇や停職処分など出来るはずがなく、本来なら二人が懲罰を問われるべき改竄問題等についてはほぼ「無罪放免」というか、特赦状態になったのです。

 

麻生判断により免責されたも同然です。

 

歴史的重大不祥事を起こした財務省ですが、気がつけば、担当の理財局長・事務次官はもはや重い責任を問えない一般人。

現役官僚は当時の責任者ではないので重い懲罰はなし。

そして麻生大臣は一部の部局が勝手にやったことなので辞任の必要なしというのがシナリオでしょうか。

 

結局、数々の重大不祥事の責任を負う人が財務省には誰もいなくなったのです。

まるで魔法のようです。

麻生大臣のガバナンスの結果です。

 

 

麻生氏の判断、発言、態度、無責任さはもはや社会常識を越えていませんか。

あえて事を狭く、メディアへの取材対応に限ってみても、記者に対する多くの不正確で不適切な発言や、日常的なパワハラまがいの言動について、メディアは麻生氏に抗議し、その上で真摯で正確なメディア対応を求める時期に来ているのでないでしょうか。

 

 

もはや麻生節だの、美学だの、キャラクターだのと呑気に言っている状況ではなく、日々我慢して取材を続けている記者さんたちも怒るべきです。

記者さんにはいろいろ事情もおありでしょうが、抗議の声を上げるのにテレ朝女性記者ほどの勇気はいらないと思います。

 

赤信号、みんなで渡れば恐くない。

 

 

(註)人事院規則ではセクハラが繰り返された場合は懲罰は重くなるが、財務省は4月4日のみを認定し、他の調査を打ち切るので軽い処分に終わる。福田氏はすでに退職しているので懲戒ではなく、懲戒相当の金額を自主返納する。よって福田氏の経歴に懲罰はつかないと思われる。福田氏はセクハラを認めていないので、返納金がセクハラ行為への懲戒相当なのか、信用失墜行為への懲戒相当なのか不明。

 

by 両角敏明[元テレビプロデューサー]

 

 

 



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