6ヶ国語を話すポーランドの女性が、日本のタクシー運転手になった理由

 

外国人の観光客が増える中、日本のタクシー会社にも外国人運転手が現れています。

 

2018年1月に都内のタクシー会社に入社したポーランド出身の津上・サバ・ファビオラさんは、女性で6カ国語を話し、国費留学の経験もあります。

 

「日本のタクシー運転手のプロフェッショナル精神が魅力」

という彼女。

 

なぜ、ドライバーの道を選んだのか?

運転席から見える日本の風景とは?

 

話を聞きました。

 

 

北京留学、六カ国語が話せる才女

タクシー大手の「日の丸交通」に入社したファビオラさん(47)は、ポーランド語、英語、ロシア語、中国語、日本語を話し、現在スペイン語も勉強中だそうです。

1989年19歳の時に、北京に国費留学し、北京語言学院(現在の北京語言大学)で語学を身につけました。

大学では「環境生物学」を専攻したそうです。

 

大学卒業後、ポーランドとドイツが合同出資したお酒の会社に勤め、通訳や翻訳のほか、人事マネージャーも担当しました。

その後、上海支社で管理職としてのオファーを受けました。

 

 

来日を決意

当時の上海に行った同僚は幹部に出世したそうで、

「もしずっとそこにいれば、社長クラスになれたかも(笑)」

と振り返ります。

 

ところが、ファビオラさんは、そこで限界を感じます。

「お酒を販売するビジネスばかりを考えることが、好きではないことに気が付いたのです」

その時、日本語の勉強しようと思い立ちました。

「東洋と言えば日本と中国です。両方の言語に精通すれば、東洋に精通する人材としてポーランドに戻ってもきちんと就職ができると考えました」

 

そのため二カ国語を習得することに力を注ぎました。

「日本語か中国語か、どちらか一つだけ上手にできる人はいても、両方ともネイティブ・レベルで話せるポーランド人は今でもいないと思います」

 

 

早稲田大学で修士号

日本語を学ぶため、1997年に来日。

 

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で修士号を取り、博士課程(社会発展と国際人権)まで進学しました。

 

日本語学校に在籍した時に、日本人の夫と出会います。

「最初は留学後にポーランドに戻るつもりでしたが、結婚したので、そのまま日本に残りました」

現在、2人の息子は15歳と17歳に。

夫とはその後離婚しましたが、名字はそのまま残しました。

 

苗字を残した理由について「子どもたちは日本とつながっていますから」と説明します。

昨年、ナイジェリア人の男性と再婚し、名字に「サバ」が加わりました。

 

 

「外国人を尊重する国」

日本で暮らす中で感じているのは、外国人への接し方の違いです。

ヨーロッパ各地では、イスラム系移民などに対する偏見や攻撃的な行動(イスラモフォビア=イスラム恐怖症)などが広まっています。

母国のポーランドでも、バスの中でイスラム教徒と見られる女性のブルカ(全身を覆うヴェール)を取るよう、乗客が詰め寄ることがあったと言います。

 

一方、日本は日本人同士が尊重し合っているだけでなく、外国人を尊重していると感じるそうです。

「例えば役所などに行くと、お金持ちも、そうではないも、どんな服装の人でも職員は平等な態度で接します。外国人に対しても、もちろん同じ態度で接してくれます。ほかの国の場合は、残念ながら見た目で態度が変わることが多いと感じます。日本のほうが人間を尊重していると思います」

 

日本が大好きなファビオラさんですが、気になることもあるそうです。

「日本はルールが多すぎます。人生が短い。仕事だけではなく、家族を大切にして、もっとも楽しく生きるべきですよ」

 

 

「平等に扱ってくれる」求人に応募

これまで、日本では語学教師、通訳、ガイドなどの経験してきました。子どもとの時間を大事にするため正社員はあえて選びませんでしたが、今回、タクシー運転手には正社員として入社します。

 

もともと運転が大好きだったというファビオラさん。

「来日して21年間、北海道以外の都道府県は全部車で運転して回りましたよ。東京から鹿児島まで走ったこともあります」

と語ります。

 

そんな時、目に入った日の丸交通の求人広告でした。

「最初は1カ月で11日勤務というところに惹かれました。1日の勤務時間は長いですが、しっかり働き、しっかり休憩を取るという点はいいと思います。日の丸交通はとてもオープンで、外国人を本当に必要と感じました。これまで経験した日本の会社と違い、平等に扱ってくれる」

「女性なので、ひょっとしたら、乗客から『女性で?外国人で?道大丈夫?』みたいな目で見られるかもしれません。できれば、ナビに頼らない乗務員になりたい」

と意気を込んでいます。

 

 

プロ意識の高いドライバー

 

ポーランド出身で中国に留学していたファビオラさんにとって、日本のタクシーはどのように見えるのでしょう?

まず、運賃は「高い」そうです。

 

一方で「プロ意識」の強さは世界屈指だと言います。

「運転手は制服を着ていて、白い手袋をする人もいます。非常にプロフェッショナルな雰囲気があります」

 

清潔さも魅力だそうです。

「車内は真っ白なシーツが敷かれ、リムジンのような綺麗さと高級感があります」

 

一番の違いは接客です。

「お客さんに迷惑をかけないように、日本のタクシー運転手は積極的に声をかけません。お客さんから話しかけられても、プライベートなことは言及しないのがルールになっています」

 

ポーランドと中国の場合、制服は基本的ありません。

車両もバラバラで、綺麗で状態のいい車もあれば、ぼろぼろのものある。

 

そして運転手さんはかなりおしゃべりです。

「中国でタクシーに乗ると距離が長くなることもあり、30分以上おしゃべりする人もいます。ユーモラスな人が多く、歴史や政治のことをよくしゃべってくれて、勉強になることもありますが……愛人の存在まで教えられたたこともあります(笑)」

ちなみに、ポーランドも日本も、乗客は後部の座席に座ることが多いですが、中国の場合、助手席を好む人が多いそうです。

 

 

東京オリンピックは気にしない

2020年の東京五輪についてファビオラさんは

「すでに日本は観光地としてヨーロッパでは人気です。五輪はあまり意識していませんね」

と言います。

「五輪があってもなくても、日本は素晴らしい文化や自然、美味しい料理、そして安全という魅力があります」

「日本のタクシー産業は、今後、ますます発展できるはずです。運転だけでなく、観光の知識も身につけて『東京観光タクシー』の認定ドライバーになりたい」

と話していました。

 

 

 



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