余命ゼロ宣告で錯乱 小西博之さんを救ったビールのミニ缶

 

ドラマやバラエティーで活躍している俳優の小西博之さん(58)。

2005年1月に末期がんと診断され、タレント生命の危機に陥った。そんなピンチを救ってくれたのは一缶のビール……。

◇  ◇  ◇

「あなたは今、この瞬間に死んでもおかしくない状態です。生きていること自体、私の経験からすれば、あり得ないことです」

 

東京慈恵会医大付属病院の担当の頴川晋先生にこう宣言されたのは05年1月14日でした。

 

先生によると

「左の腎臓にできたがんは縦20センチ、横13センチもあります。これは日本の腎臓がん史上で5本の指に入る大きさです」

「他の臓器に転移している可能性は大きい」……。

 

「ステージは?」と尋ねたら、「強いていうなら『即死』です」。

余命ゼロ宣告でした。

 

覚悟はしていました。

 

20日前の04年12月25日に別の病院でエコーの検査を受けたのですが、担当医は診察前の笑顔から一転、とても厳しい表情で慈恵医大病院への紹介状を書いてくださり、ただならぬものを感じていたからです。

「やっぱりー」。病院に同行した事務所のスタッフは泣き崩れ、改めて自分の運命に愕然としました。

 

■ソファを引き裂き、本も食器もひっくり返すほど荒れた

でも、25日の診察後の方がショックは大きかった。

というのは、2000年に突発性難聴を発症した以外、病気らしい病気をしたことがなく、「がんかもしれない」と思った途端、気持ちが錯乱。どうやって事務所に帰ったのかすら覚えてないくらいだったんです。

 

街には華やかなイルミネーションと笑顔が満ちあふれていたその晩、自宅で荒れに荒れました。

ワンワン泣きながらソファを引き裂いて、中のクッション材をまき散らし、本棚の本は手当たり次第に投げ捨てて破り、台所の食器も片っ端から叩き割る。

ひとしきり大暴れして風呂に入ってまた泣いて。どれだけ泣いても声は外に漏れませんからね。

 

そして、風呂から上がり、たまたま冷蔵庫を開けたら目についたのが缶ビール。

135ミリリットルのコップ1杯分のミニ缶でした。

実は普段はお酒は飲まないんです。

勧められたら1杯ぐらいは付き合うけど、自分から飲もうとは思わない。

だから多分、お歳暮か何かでいただいたものでしょう。



 

でも、その時は不思議と飲みたくなったんです。

それをグイッと空け、ファーッと体中にアルコールが回ったら、何か肩の荷が下りたような楽な気持ちになり、そのまま眠ることができたんです。

 

翌日、冷静になると、芸能界の恩師、萩本欽一さんの言葉が脳裏をよぎりました。

「人生は50対50だよ。幸・不幸は交互にやってくる。人は悪いことがあれば嘆き、悲しみ落ち込む。落ち込んでもいいの。でも、不幸は拒絶せずしっかり受け止めなきゃならない」

 

人気バラエティー「欽ちゃんの週刊欽曜日」のレギュラーに抜擢された82年当時、よく言われたものです。

その真意が、20年以上経ってようやく分かった。

 

「よし、がんを治療して元気になった暁には『徹子の部屋』に出演し、ネタにしよう」

こう前向きに考えました。

とはいっても、夜ひとりになると不安が募り、また泣いてしまう。

ところが、そのあとでビールを飲むとまた気が楽になって安眠できたんです。

 

かといって、たくさん飲もうとは思わなかったですね。

ミニ缶でちょうどいい。

これを手術のために入院する前夜、2月13日まで欠かしませんでした。

格好の精神安定剤であり、睡眠導入剤だったんですね、きっと。

 

2月16日、手術は無事成功。

9日後には退院できました。

そうなると缶ビールはいつものように冷蔵庫にあるのに、なぜか飲もうとは思わなかった。

 

頴川先生? 缶ビールのことは話しませんでしたから、飲酒は知らなかったと思います。

がんにどんな影響があったのか今となっては分かりません。

 

でも、あの時のミニ缶は僕にとっては紛れもなく“命の水”であり、“夢と希望の飲み物”。

 

もしかしたらサンタクロースからのプレゼントだったのかもしれません。

 

 

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