カヌー薬物混入に吉田沙保里が緊急声明

 

昨年9月のカヌー・スプリント日本選手権で、鈴木康大(32=福島県協会)が小松正治(25=愛媛県協会)の飲料にドーピング違反の対象となる禁止薬物を混入したことが発覚し、スポーツ界に大きな波紋が広がっている。

 

10日には鈴木が謝罪文を公表し、被害者の小松も心境を語った。

 

関係者も対応に追われるなか、レスリング女王の吉田沙保里(35=至学館大職)が緊急メッセージ。

前代未聞の事件にいつになく厳しい表情を見せ、自身の経験をもとに後輩アスリートたちに対しては自己管理の徹底と意識改革を訴えた。

 

いつも笑みを浮かべている吉田の表情が、急に硬くなった。

 

10日、都内で行われた「糸引き納豆の日」のイベントに出席後、トップアスリートがライバル選手の飲み物に禁止薬物を混入するという信じられない事件について問われると、強い口調で話した。

 

「若い子が出てきて焦る気持ちは分からなくもないし、勝ちたい、(五輪に)出たいという思いは誰にでもある。でもそれをしちゃいけない。絶対にやってはいけない」

 

2002年に世界選手権で初優勝後、15年まで16大会連続で五輪、世界選手権を制してきた。

勝てば勝つほどドーピング検査は必須となり、どんなアスリートより長期間、この問題について敏感だったといっていい。

 

「今までドーピング講習も抜き打ちドーピング(検査)も、何度も何度も受けてきた。昔は無知だったけど、受けるうちにすごく気を付けるようになりました」

 

今回、禁止薬物混入事件の発端となった飲み物についても、決して放置しないよう細心の注意を払ってきたという。

 

「国際大会の場合は特に気を付けましたよ。自分の飲み物は飲んだら絶対に自分のカバンに入れ、目の届くところに置いていた。どうしても難しいときは、信頼できる人に見てもらっていた」

 

虎視眈々と打倒・吉田を目指すライバルが多い海外ではなおさらだ。

実際、レスリングではドーピング違反で五輪メダルなどを剥奪されるケースが少なくない。

最近では、08年北京五輪男子フリー60キロ級で銅メダルだった湯元健一氏(33)が対戦相手のドーピング違反により銀メダルに繰り上がったばかり。

 

一度は五輪種目除外の危機にあった世界レスリング連合(UWW)も改善が急務と考えているが、現状では「なくなった」とは言いがたい。

もちろん、競技の「顔」で国民栄誉賞を受賞した吉田の行動は常に注目されており、絶対にドーピング問題で手を抜くことはない。

 

吉田に何より強い衝撃を与えたのは、今回の卑劣な行為が国内、しかも親しかった仲間に対して行われたことだ。

レスリングでライバルへの暴挙という点では、14年世界選手権で男子フリー74キロ級の高谷惣亮(28=ALSOK)が、試合で下した相手に熱湯をかけられたことがあった。

 

「そういうのも、海外ですからね。今回は日本でですからね。びっくりですよ」

 

厳格なルールで守られたはずの五輪スポーツでも、まさに何があるか分からない状況…。

 

今回の件を教訓に、吉田は個々がより注意を払うことを後輩アスリートたちに求める。

「今後、こんなことは絶対にないと信じているが、これを機に誰もが自己管理を徹底するしかない。悲しいことですが、こういうことをやられるかもしれないと自覚する必要があります」

 

レスリング界、いやスポーツ界の女王が、後輩アスリートたちへ強いメッセージを送った。

 

 



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