池坊議長「礼を欠いた」発言でネット炎上。

 

日本相撲協会は4日、臨時評議員会を開き、理事会が貴乃花親方に対して出していた解任決議を審議し全会一致(7人中5人が出席、議長は採決に不参加)で承認した。

協会は12月28に臨時理事会を開き、引退した元横綱の日馬富士が貴ノ岩に対して起こした暴力事件に関して、貴乃花親方が巡業部長として協会への報告義務を怠り、その後の協会の調査に対し非協力的だったことを「理事としての忠実義務違反」として理事の解任、2階級降格を決め、評議員会にその決議を諮っていた。

 

この日、評議員会の終了後に会見した議長の池坊保子氏は、

「公益法人の役員としておおよそ考えられない行為」

と貴乃花親方の行動を断罪した上で、

「上司であり先輩でもある八角理事長が何度も携帯電話に電話してもまったく応答がなく折り返しの電話もしなかった。著しく礼を欠いていた」

と、その貴乃花親方の協会に対する態度や対応を解任理由に付け加えた。

これらの最終処分と、池坊議長の「礼を欠いた」という発言を巡ってツイッターやSNS、コメント欄などネット上では大炎上した。

「礼って何?」

「一体どこが著しく礼を欠いていたというのか」

「礼を欠いた」という発言そのものを疑問視する声だけでなく評議員会が承認した処分に対する反対意見や貴乃花親方の処分の他にもっと重要な論点があることを訴える意見もネット上に並んだ。

「貴乃花が礼を欠いていたのはその通りかも知れないけど、協会側は著しく常識を欠いてるよね」

「論点がずれている」

「一番礼を欠いていたのは、一部の力士たちであり、それを隠ぺいしようとした相撲協会じゃないの?」

「こんな不公平な処分がまかり通るなんて」

「最後の理屈は被害者親方が電話に出なかったことだって?それが暴行事件そのものより重大なの?」

「どこまでも疑問だらけの評議員会」

「礼節とか品格って言葉を都合のいいように利用している」

「被害者が加害者より処罰が重いという不可解な話」

 

池坊議長がわざわざ口に出した「礼」とは何か。

辞書を引くと

「社会秩序を保ち、人間関係を円滑に維持するために守るべき、社会生活上の規範。礼儀作法・制度など」

とある。

今回の元横綱・日馬富士が起こした暴力事件で、社会秩序を保たなかったのは貴乃花親方なのだろうか。

電話に出ないことが、公益財団法人の理事が負う忠実義務違反になるのか。

 

理事会が決議した2つの理由に「礼を欠いた」ことが付け加えられたことに協会や評議員会サイドの“本音”が見えたような気がしたが、実は、このことに協会が抱える本質的な“勘違い”や“一般社会とのズレ”が見え隠れしている。

池坊議長は、貴乃花親方の「礼を欠いた」ことを問題にするよりも協会のガバナンスの欠如を問題にすべきだったのだろう。

相撲ジャーナリストの荒井太郎氏も、

「池坊議長の感情的な部分が出た発言でしたね。結果的にマスコミがとびつくようなリップサービスになってしまいましたが、解任理由とした“礼を欠いたこと”が、事件の報告義務を怠ったことや、その後の協会の聴取などに非協力的で公益財団法人の理事として忠実義務違反をしたことと、同列に受け取られるような発言をしたことは問題だったと思います。協会内の実態が露わになったような失言だったように感じました」

という意見を述べる。

協会の意向に沿わない“貴乃花親方嫌い”が、処分対象となるアラ探しに走っていたようにさえ思える。

そもそも元横綱の日馬富士の暴力を使った貴ノ岩への“制裁”や、その背景にある“かわいがり”や“絶対服従”の相撲界の改善されていない体質にこそ社会秩序の欠如がなかったか。

モンゴル人力士の問題や、事件の発端を作りながら、暴力行為を見過ごして止めもしなかった白鵬の処分が報酬減額で被害者サイドの貴乃花親方が、それよりも重い「降格処分」では、やはり不公平感が際立つ。

また暴力事件があったことを知りながらも、元日馬富士を九州場所に上げた協会の責任、そのトップである八角理事長の責任問題に対しての処分がないのもいかがなものか。

八角理事長は自ら3か月の報酬返上を申し出たが、それは処分ではない。

元日馬富士の師匠である伊勢ケ浜親方は理事を辞任、結果的に貴乃花親方と同じ2階級降格となっているが、これも処分ではない。

理事会が評議員会に決議を提案すべき案件は、貴乃花親方の理事解任だけで良かったのだろうか。

 

前出の相撲ジャーナリストの荒井氏も、

「現場に居合わせながら暴力を止めなかった白鵬、鶴竜の横綱2人が減給で貴乃花親方が解任ではバランスを欠いたような気がします。また協会が、事件を起こしていた元横綱の日馬富士を土俵に上げ2番取らせてしまったという管理責任もあります。

その責任問題は八角理事長の3か月報酬返上ということで、自らに処分を科していますが、協会の処分ではありません。確かに問題点ではあります」

と、問題視している。

 

貴乃花親方は、今回の処分を電話で知らされ了承したとされているが、今後もまだ火種は残る。

 

前出の荒井氏は、今後の問題点として、こんな指摘をする。

「2月の理事選におそらく貴乃花親方は立候補して当選するだろうと見られます。理事選は、あくまでも理事候補選挙であり、評議員会が承認して理事となります。

今回解任を承認した評議員会が再び、忠実義務違反をした貴乃花親方の理事を承認するとなると、そこに整合性が取れないという矛盾が生じます」

2月に理事選が行われるが、これはあくまでも理事候補選挙で、その結果選ばれた10人の理事候補を評議員会が承認して理事として認められることになる。

公益財団法人となってから、この評議員会制度が導入されたが、過去に一人も理事の不承認はなかった。

今回は、貴乃花親方解任の整合性を保つために、2月の理事選で再選されても、評議員会が承認しないという可能性はあるのか。

前出の荒井氏は、

「今日の会見でも、もしそうなると話し合いなどの過程を経て真摯に粛々と決めるとも説明されていました。“認める”という余地を残していると感じました。

解任の処分を貴乃花親方が受け入れたことで、その期間の長短は別にして、処分は終わったのですから、2月の理事選で当選した場合に理事として承認することに問題はないと私は考えます」という意見。

 

おそらく、そこが落としどころなのだろう。

だが、理事選には、貴乃花親方以外にも問題がある。

師匠としての管理責任を取り、理事を辞任していた伊勢ケ浜親方が立候補した場合の承認の是非だ。

「実態として横綱にまでなった力士をどれだけ師匠が管理できるのかという問題があります。横綱に関しては自己責任の部分が強く、私は辞任した伊勢ケ浜親方が再び理事選に立候補することに反対ではありません。しかし、伊勢ケ浜親方が当選した場合、評議委員会が承認するかどうかは焦点になります。

私は阿吽の呼吸で立候補しない可能性もあると見ています。過去に評議員会が理事を承認しなかった例もなく、その場合、補欠選挙なのか、選挙のやり直しなのか、手続きが煩雑になり混乱を招くことになると思います」

というのが荒井氏の見立て。

 

理事候補選は2月の頭に行われる予定だが、その結果を巡ってまたひと波乱もふた波乱もありそう。

 

横綱が起こした暴行事件の総括と、再発防止に向けての動きや論点とますます乖離していきそうである。

 

 



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